「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差:働き方の「今」を知る(3/5 ページ)
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。
がむしゃらに働いたが、昇進できなかった──そのワケは
お恥ずかしい限りだが、筆者自身の若かりし頃、このフォロワーシップが身についていなかったせいで、マネジメントになり損ねた経験がある。読者諸氏にはぜひ他山の石としてご参照いただければ幸いだ。それは某社で営業チームをまとめていた、リーダー時代のことであった。
当該シーズンは全社的に目標達成が厳しい状況にあったのだが、筆者自身は毎日終電帰り、時には終電を過ぎるまで残業し、部下にも強くハッパをかけ、なんとか「自分自身」「部下」「チーム」、全ての目標数字を達成させることができたのだった。
苦しい四半期を過ごしたものの、明らかな業績は残せたわけであるから、「次の期は間違いなく昇給と昇進が待っている……」とワクワクしながら、筆者は期末の評価ミーティングに臨んだ。
しかしその席で、当時の上司が放った言葉に筆者は耳を疑うこととなる。
「お前は来期もステイ(昇給も昇進もなし)だ。 で、サブマネジャーはSくん(筆者の後輩)になってもらう」
「なぜですか! ウチのチームは私も含めてメンバー全員目標達成してるし、そもそもSなんて、全然数字出せてないじゃないですか!」
筆者は強硬に食い下がったが、上司は冷静にたしなめた。
「確かに、全社的に厳しい状況の中で、今期はよく成果を出してくれた。しかし、お前はメンバーの様子が見えてるか? 皆疲れ切ってる。プレッシャーで人を動かすようなやり方を、オレは評価するわけにはいかない」
確かに、部下に厳しい行動目標を突きつけ、今であればパワハラにもなりかねない叱咤をしていたことは事実であり、上司の指摘はもっともであった。とはいえ、目標数字を達成している以上、評価据え置きはさすがにないだろう。そんな不満が口をつきかけたとき、上司から聴かされた話が、筆者自身のその後の仕事に対する姿勢に大きな影響を与えることとなったのだ。
「なぜSくんが昇進したか分かるか? 彼は確かに、個人業績としては普通だ。しかし、彼の存在は周囲のメンバーにとって強力な助けになっている。率先して仕事のサポートをしてるし、業績不振のメンバーを励ましたり、気軽に相談に乗ったり、オレの言葉の意図をくんでメンバーに伝えるなど、とにかく普段の行動から視点が高いんだ」
「今回昇進を決めたのは、Sくん本人の希望じゃない。メンバーから『Sさんにサブマネジャーになってもらいたい』という要望があったからだ」
筆者自身は、業績向上のための努力はしているつもりであった。しかし上司の話を聞いた瞬間、肝心の努力の「方向が違う」ことと「視座が違う」ことに気付かされ、猛省した次第だ。
個人や部下、チームの業績を向上させることは確かに重要だが、部下の業績向上のために強烈なプレッシャーを与え続け、結果的に部下が潰れてしまっては取り返しがつかないし、チームの業績も消散してしまうだろう。
そんなピリピリした環境よりも、お互いが仕事をサポートし合い、目標達成に向けて建設的な議論ができる関係性の組織のほうが良いに決まっている。そうなればチーム内に「心理的安全性」が生まれるので、追う目標は高くとも、ストレスのない職場環境が実現するはずだ。
Sが当時の筆者のように、ギラギラした意欲をもって昇進を狙っていたかどうかは分からない。しかし彼が普段の周囲とのコミュニケーションの中で、自然とフォロワーシップを発揮し、結果的に周囲のメンバーから頼りにされ、マネジメントに推挙されたことは紛れもない事実であった。ちなみにSはその後マネジャーに昇進し、より大きな上場企業へと転職していったが、転職先においても子会社社長などを歴任する活躍をしている。
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