西九州新幹線に乗ろう! 新鳥栖〜武雄温泉間のフル規格新幹線はなくてもいいから:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
8月23日、西九州新幹線の特急券が発売された。開業日9月23日の上りと下りの一番列車は10秒、二番列車も1分半で完売したという。福岡県と長崎県は、西九州新幹線のフル規格を佐賀県内でも実現したいだろう。しかし佐賀県がいらないというフル規格新幹線を押しつける必要はない。
開業日の列車はまだまだ空席アリ
なるべく早く乗りたい。一番列車に乗りたいという気持ちは分かるけれど、開業当日に乗りたければ、まだまだ余裕で間に合う。新幹線かもめの車両編成は指定席が158席、自由席が233席で、自由席の比率が高い。「遅い時間に乗るより自由席でも早く」という人が多いかもしれない。
9月23日の長崎の日没は18時17分で、日没後30分は明るいとはいえ、車窓を楽しめない時間帯の列車は不人気だ。それにしても開業初日にしては寂しい。指定席争奪戦の報道で盛り上がっていると思ったけれど、拍子抜けだ。
私はこの日、日本全国の旅客鉄道路線完乗のタイトルを剥奪されるわけで、いち早く乗りに行ってタイトルを奪還したい。同好の諸氏も一番列車にチャレンジしたはず。
私は喧噪が苦手だから、後日、落ち着いた頃に行こうと思っていた。ところが空席状況を見れば、当日の午後には落ち着いてしまいそうだ。なぁんだ。やっぱり出掛けてみようかという気分になった。
気になるところは、9月23日が祝日で、その夕方の上り列車が空席になっている点だ。福岡方面の方々が長崎を観光して帰る時間に空いている。休日の新幹線かもめにとって主要顧客は観光客だ。三連休の初日だから空いているのかと思って、三連休の最終日、9月25日日曜日も調べたら空いている。
ビジネス用途としてはどうか。平日である9月25日を見ると、武雄温泉発11時1分のかもめ17号が「残席わずか」となっている。この列車は博多駅10時4分発の「リレーかもめ17号」から乗り継げる。用向きにはちょうど良い列車かもしれない。これ以外は空席ありだ。
もっとも、こうした状況は現行の「在来線かもめ」と同じだから、自由席で十分だと考える人が多いかもしれない。とはいえ、一番列車の盛り上がりが長続きしないようでは、「順風満帆」とはいえない。新幹線が通れば勝手に乗客が増えるわけもなく、継続的な集客の取り組みが必要だ。
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