西九州新幹線に乗ろう! 新鳥栖〜武雄温泉間のフル規格新幹線はなくてもいいから:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
8月23日、西九州新幹線の特急券が発売された。開業日9月23日の上りと下りの一番列車は10秒、二番列車も1分半で完売したという。福岡県と長崎県は、西九州新幹線のフル規格を佐賀県内でも実現したいだろう。しかし佐賀県がいらないというフル規格新幹線を押しつける必要はない。
長崎観光プランを立てたら、佐賀県は通らなくても良かった
西九州新幹線に乗る計画を立ててみた。私が住む関東から最短時間だと日帰りで済む。羽田空港発で朝出発の飛行機に乗り、長崎空港からバスで長崎駅前に10時ごろに着く。長崎駅10時43分のかもめ20号と、武雄温泉駅11時58分発のかもめ21号で往復すれば、午後の航空便で明るいうちに羽田空港着だ。
それでは味気ないから、西九州新幹線開業と同時に運航を開始する観光列車「ふたつ星4047」に乗ろう。長崎駅14時53分発で武雄温泉駅17時45分着。18時ちょうどの「かもめ45号」に乗ると長崎駅着18時25分。バスで空港に向かえば最終便に間に合う。観光要素がちっともなくて、鉄道ファンでなければ理解できない旅だ。
もっとも、私は長崎を3回ほど訪れて主要観光地は巡ってしまったし、路面電車もすべて乗ってしまった。トーマス・グラバーが江戸時代に日本で初めて小型蒸気機関車を走らせた「我が国鉄道発祥の地」も拝んだ。雑誌の取材にかこつけて豪華な卓袱料理(しっぽくりょうり)もいただいたから、もはや長崎観光に未練はない。風呂屋(銭湯)の孫でありながら温泉のこだわりもなく、武雄温泉の関心は薄い。
ところが、老母の「私も行きたい。九州に行ったことがないから」のひと言で状況が変わった。連れて行くとなれば主要観光地を巡るべき。武雄温泉に行ったら温泉旅館に泊まるべき。「これが最後かも」と思うから、「ちゃんとした旅(笑)」にしよう。そんな話を母方の叔父夫婦に話したら、一緒に行ってみたいという。嫁いだ娘ふたりの家族もどうだろう。みんなで行くなら孫たちが小さいうち……となって、ちょっとした団体旅行になりそうだ。
子どもたちが行くとなれば土日の1泊2日。そこで、土曜の初便で長崎へ。昼食は卓袱料理。その後、観光列車「ふたつ星4047」で武雄温泉へ。この列車は武雄温泉発が有明海沿い、長崎発が大村湾沿いを走る。このうち、私は大村湾ルートの車窓をオススメする。
そして武雄温泉で泊まる。翌日は武雄温泉駅10時発のかもめ13号で長崎へ。長崎市内観光には「定期観光バス 長崎よかとこコース」があって、約5時間で原爆資料館、平和公園、出島、長崎孔子廟、大浦天主堂とグラバー園を巡る。終了後、空港バスで長崎空港へ。ナイトフライトで羽田着。
子どもたちは早朝出発がツライかもしれない。ならば金曜日の学校終了後に長崎へ飛び、前泊するオプションもある。その場合、長崎の夜を楽しもうではないか。稲佐山で夜景を見るという定番コースも加わる。「どうですか。完璧じゃありませんか」と提案中だ。
このルートは我ながら良くできたと思ってここで紹介したけれど、そこで私は気付いてしまった。「九州新幹線の西九州ルート、佐賀県の武雄温泉〜鳥栖間はいらない」と。
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