比類なきパナソニック起業制度 よくある社内ベンチャー募集と何が違うのか:本田雅一の時事想々(3/5 ページ)
大手企業が新規事業に取り組むことは珍しくない。しかし、パナソニックの起業制度はそうした取り組みの中でもあるポイントで一線を画している。それは何かと言うと……。
“ケア家電”への挑戦 カーブインまでのシナリオは
BeeEdgeでは、チョコレートドリンクマシンの「ミツバチプロダクツ」、歩行訓練器を開発する「ことほ」などいくつかのスタートアップが生まれている。
【編集履歴:2022年9月8日午後1時45分 初出時「ミツバチプロダクツ」の名称に誤字があったため修正いたしました】
その中でも今年4月に発表された「ギフモ」への増資(パナソニックとBeeEdge合計2.5億円)は、将来的にパナソニックへのカーブイン(再編入)も意識したものだという。
ギフモは料理の見た目や味をそのままに、野菜や肉を歯でほとんど咀嚼(そしゃく)しなくても食べられるぐらいに柔らかくする「デリソフター」という商品を開発するBeeEdge発のハードウェアスタートアップだ。
介護が必要な老人を抱える主婦の仕事を軽くするために成熟させてきた技術と製品だが「デリソフター自身も高齢者の生活水準を高めるための新しい製品だが、そこから派生して“ケア家電”という製品ジャンルに発展する可能性を秘めている(春田氏)」と話す。
老人介護向けのケア家電は、なかなか大企業本体では踏み込んでいくことが難しい領域だ。例えば、歩行支援などに踏み込んでいく場合、事故が起きる可能性などを精査していると事業化が思うように進まない。
パナソニックの外でチャレンジしながらケア家電のジャンルを開拓していくことで、現在あるパナソニックの事業へと再度組み込むシナリオも見えてくる。
パナソニックは在宅ケアやサービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどのビジネスを「エイジフリー」というブランドでおこなっているが、こうした事業と関連づけ、自宅で介護する家族をサポートするコンシューマー家電というジャンルにつなげるというストーリーだ。
関連記事
- 「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?
米国は、日本に比べて返品OKの小売店が多い。米アマゾンなどの大手小売りでは、返金するのに商品は回収しない「Keep it」という新しい返品方法が進められている。なぜ、このような手法を取るのか? - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - オンキヨー破産の反響に“大きな誤解” オーディオは「ノスタルジックなビジネスではない」と言えるワケ
オンキヨーが、5月13日に自己破産を発表した。この件に関連して、オンキヨーをかつてのオーディオブームに乗じ、今は勢いを失った日本ブランドの代表として“ノスタルジックな論調”で語る言論が多かった。しかし、筆者はオンキヨーは「伝統的なハイエンドブランド」という立ち位置ではなく、またオーディオビジネスの本質をつかんだブランドは今も求められていると指摘する。オーディオ業界で、何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.