東急100周年、なぜ一貫して「沿線ビジネス」を続けるのか:継続は力なり(3/3 ページ)
9月2日に100周年を迎えた東急グループ。鉄道事業を軸に沿線ビジネスを展開してきたが、なぜ一貫して継続できたのか。
沿線ビジネスでどれだけ利用が増えたのか
東急グループの沿線ビジネスで、最も成功したのは多摩田園都市である。多摩田園都市は、東急田園都市線を中心としている。その東急田園都市線に、南町田という駅があった。2000年にグランベリーモールができ、それまで1日に7000人いなかった乗車人員が、1万人を超えた(東京都統計による)。
その後、17年にグランベリーモールが閉鎖、19年に南町田グランベリーパークが開業し、駅名も南町田グランベリーパーク駅とすると、1日4万人超えの乗降人員となった(東急の発表データより)。
東急は100周年の広告で、「『自律分散』をめざすまちづくり」を掲げ、その一例として南町田グランベリーパークを紹介している。「職」「住」「遊」「学」が近接融合したまちづくりを目指し、駅直結のマンション計画もあり、テレワークスペースも備えるという。巨大な施設をつくるだけではなく、その地域を育ててきたことが、東急の沿線ビジネスの一貫性を示している。
最近では、東急田園都市線の駅近くにマンションが多く建つ一方、駅からバスでなければ行けないような住宅街でも、交通の便が良くなるようなデマンドバス事業にも取り組んでいる。
長年にわたって沿線に住んでいた人が高齢化する中、交通の便を良くしないと快適な暮らしができないという考えである。一方でマンションへの移住促進や、新規居住者確保などの考えもある。
沿線の地域を育てていくことを、東急グループは継続して続けているのである。
鉄道とまちづくりを基本にした、沿線ビジネスを一貫して続けてきたことが東急グループの強みであり、一貫性ゆえに100周年の社史もつくることができた。その強みが、今後も東急グループを発展させ続けるだろう。
関連記事
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。 - ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。 - 2025年の大阪・関西万博で、鉄道の路線図はどうなるのか
2025年に大阪、夢洲で「2025年大阪・関西万博」が開催される。政府は主要公共交通機関に大阪メトロ中央線を位置付けた。このほか会場へのアクセスには船とバス、さらに具体化していない鉄道ルートが3つ、近畿日本鉄道の構想もある。また会場内の交通には、3種類のモビリティが計画されている。 - 不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか
鉄道ファンにとって最高の「借景」が楽しめるトレインビュールーム。名が付く前は、線路からの騒音などで不人気とされ、積極的に案内されない部屋だった。しかし鉄道ファンには滞在型リゾートとなり得る。トレインシミュレーターや鉄道ジオラマなど、ファンにうれしい設備をセットにした宿泊プランも出てきた。 - 東京メトロ「有楽町線」「南北線」の延伸で、どうなる?
東京メトロ有楽町線と南北線の延伸が決定した。コロナ禍で事業環境が大きく変化する中、東京メトロが計画する今後の戦略とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.