東急100周年、なぜ一貫して「沿線ビジネス」を続けるのか:継続は力なり(2/3 ページ)
9月2日に100周年を迎えた東急グループ。鉄道事業を軸に沿線ビジネスを展開してきたが、なぜ一貫して継続できたのか。
東急は何をしてきたか?
東急グループは9月2日付の『日本経済新聞』朝刊に、100周年記念の広告を出した。その中に企業理念として、「事業を通じ社会課題を解決し、美しい生活環境を創造する」ことを一貫してやり続けていたと記している。目黒蒲田電鉄創業以来一貫した基本姿勢であり、鉄道整備、住宅開発、文化事業などもその流れで展開している。
目黒蒲田電鉄も東京横浜電鉄も、鉄道事業と沿線開発を一体化した事業展開を続けてきた。住宅地の分譲、大学への土地の寄付による利用促進策といった事業を行い、東京横浜電鉄は東横百貨店を開業した。この両社は39年に合併した。
その後太平洋戦争となり、電力事業の関係や戦時統制の影響、五島慶太の事業欲などが複雑に絡み合い、東急の鉄道網は近隣の私鉄を買収したり合同したりして拡大。「大東急」と呼ばれた。戦後は元の鉄道会社へ戻っていき、現在の私鉄各社となっていった。
戦後、五島慶太は大規模な「まちづくり」を展開した。田園都市線と地域開発をセットに、多くの人が憧れるような住宅街をつくりあげた「多摩田園都市構想」である。地域には東急グループ関連の商業施設がそろっている。
このモデルは多くの私鉄がまねをするようになり、都市への人口集中が進み、旺盛な住宅需要がある中で、地域開発と鉄道事業はセットになっていった。多くの鉄道会社が採用している沿線開発ビジネスモデルは、元をたどれば東急グループによるものである。
27年度の竣工を目指し、東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店の3社共同で推進する「Shibuya Upper Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」(出典:プレスリリース)
バブル崩壊時には規模の大きさから経営が厳しくなった東急グループだが、沿線ビジネスモデルとシナジーのない事業を整理することで「強みを生かす」経営体質になった。東急東横線渋谷駅の地下化、JRや東京メトロもあわせた渋谷駅周辺のホーム再配置に合わせ、渋谷駅周辺の再開発事業にも取り組んでいる。
長引くコロナ禍で先行きは見通せないものの、渋谷を多くの人が来たいと思う街にし、東急沿線の人が電車に乗って渋谷にやってくるようになることが、東急の再開発の目標である。
一方、東急グループは沿線で暮らす人向けに、ケーブルテレビや電力事業も行っている。家にいても快適な東急ライフが送れるようにしている。
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