「新人が育ってくれない」と悩む上司が知らない、Z世代の特徴とは(3/4 ページ)
新しい価値観を持つ「Z世代」が新入社員として働き始めている。仕事への向き合い方をめぐって摩擦が起きる現場も少なくない。Z世代は何を考えているのか、それに対し、上司などの旧世代の社員はどのように対応すべきなのか。
短期にリセットされる傾向
複数の大学でキャリアコンサルティングを行い、Z世代の大学生を見てきた講師は「人あたりがすごくよく、真面目で感じもよさそうだが、本当は何をしたいのかよく分からない世代」とも指摘する。面接の練習では以前の学生に比べて緊張しないでよどみなく話すことができるし、授業後の質問や課題に関する文章を書かせても、未記入の学生は減ったそうだ。
ところが自分が話したことや書いたことを翌週には忘れる学生が多いと言う。
「面接の練習でこうしたほうがいいよと言うと『気が付きませんでした、本当にそうですよね。来週もう1回練習させてください』と言うのですが、翌週に練習しても、気が付きませんでした、と同じ対応をする。先週も同じことを言いましたね、と言ってもなぜか覚えていない。なぜだろうといろいろと考えてわかったのは、ネットやLINEの影響を強く受け、短期に集中して要領よく処理するのはすごく上手だが、それが終わるとリセットしてしまう。そのため課題を整理したり、深めたりすることはしない傾向がある」(講師)
また、グループディスカッションの時間を30分与えても、20分で終わるケースが多いそうだ。
「深いディベートをしたわけではなく、皆結論に満足していますとニコニコして報告しにくる。議論をしたがらないというより、早い時間で皆がいい気分でまとまったのだからこんなにいいことはないという感覚だ」(講師)
そして「自分の考えを整理するなど集中できる限度」が20分程度と言う。これを検証するために学生に「スマホを見ないで会話できる時間の限度」についてアンケート調査を実施したところ、20分という回答が最も多かったという。ということは1時間の会議を設定しても彼ら、彼女らは20分を過ぎると息切れしてしまうということだ。
ポイントは「短い時間軸での目標設定」
では育成を含めてこの世代にどう対応すればよいのか。重要なのは「短い時間軸で目標を設定する」ことだ。
多くの企業の新入社員研修を手掛けるコンサルタントはこのように説明する。
「新人に将来の夢は何か、30年後にどうしたいかを聞いても何も出てこないし、相手にも響かない。また、自分が納得しなければ、やらされ感を抱いてしまう人が多い。そういう人には例えば『1年後に自分の後輩が入社してくるまでに一通りできるようになりたいと思わないか』と聞けばノーという新人はいないだろう。そのために3カ月後、半年後にこれができるようになろうと説明し、最初の1カ月に何をするか目標を設定する。個々の違いに応じて本人がどうなりたいかを親身になって聞くことが大事。一度腹落ちしたら行動が早いのもこの世代の特徴だ」
もちろん、単に会社のために頑張ろうという精神論では通じない。また、この仕事をやってくれと指示しても「どうしてこれをやるんですか」と聞いてくる。
コンサルタントは「丁寧に説明し、納得しないと動かない。仕事の進め方においても、仕事の成果が求められることは変わらないが、プロセスをちゃんと観察し、一つの仕事を達成したら『よくできたね』と認めながら大きな成果に導いてあげることが大事だ」とアドバイスする。
確かに仕事を任せきりにせず、決して怒らず、相手に寄り添って丁寧に指導することは大事だ。でもこれができる先輩や上司はどれぐらいいるのかという不安もある。
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