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躍進する「ワケあって安い」スーパーとは 値上げの秋が追い風に:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
2022年に入ってから、急速に物価が上昇し続けている。消費者の財布のひもが締まり、巣ごもり需要も消失する中でも、業績が好調な小売りチェーンが複数ある。それらの共通点と、実態とは──?
「理由(ワケ)あって安い」企業の未来
今回、独断で取り上げた3社のディスカウント型小売りには、ある共通点があるように思う。一言で言えば、「理由(ワケ)あって安い」のである。
製造小売業として一気通貫のサプライチェーンを作り、販売に関してはパートナー企業と連携することで安さを実現する「業務スーパー」。農業、畜産業、漁業、製造配送拠点を自社内で構築して生産性を上げることで絶対額での安さを実現する「大黒天物産」。物流の効率化を徹底追求しつつ、DXへの投資と継続的実証を行うことで、構造的な安さを実現しようとする「トライアル」。
各社とも既存小売業の域を超えて、生産性の高い独自のサプライチェーンを構築しようとする企業と言っていいだろう。
価格訴求する小売業は数あれど、安さの仕組みを合理的に説明できる(=大っぴらにしゃべれる)企業は実は多くはない。値上げの秋以降、しばらくは価格競争の時代が続くことになりそうだが、本源的、構造的に安さを実現する企業に是非、進化を遂げてもらいたいと思う。
著者プロフィール
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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