セダンはいつから売れなくなったのか? クラウンもSUV化: 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
トヨタの新型「クラウン」が発売になりました。セダンだけでなく、他の車形を作るのでしょうか。その理由は「セダンが売れない」。これに尽きるでしょう。
さらに10年後の2012年は?
さらに10年後となる2012年(平成24年)はどうか。
「プリウス」が1位となりましたが、いわゆる正統派の3ボックスのセダンは、「カローラ」のみ。10位以下では12位の「インプレッサ」、26位の「クラウン」、30位の「レガシィ」。つまり、30位までの30台中セダンを含むモデルは5。セダンだけのモデルは、「プリウス」と「クラウン」の2つだけしかありません。
つまり、まだ昭和の雰囲気の残る平成の頭のころは、ベスト10のうち8モデルがセダンでした。ところが10年後の02年は、ベスト10内に「カローラ」のみという惨状に。ただ、セダンの数自体はまだ全体の3分の1近くありました。しかし、12年になると、セダンの数自体が半減。ベスト10に残る唯一のセダンもハッチバックに近い「プリウス」のみとなったのです。
つまり、平成の最初の10年ほどでセダンの人気は凋落。その後はモデル数も減っていきました。結果、現在では、セダンを含むモデルはランキングの50台中5台のみ。セダンだけとなれば「プリウス」と「クラウン」の2モデルだけというのが現状です。
ちなみに、トヨタが現在販売するセダンは「プリウス」「カローラ」「カムリ」「クラウン」「センチュリー」「MIRAI」の6モデル。「カローラ」と「クラウン」以外は、すべてセダン専用モデルとなります。これは他メーカーと比べれば、圧倒的なセダンの数といえるでしょう。
なにせ日産は、この夏に「スカイライン」「シーマ」「フーガ」の生産を終了しました。日本ではセダンの販売を終えてしまったのです。同じように三菱自動車とスズキもセダンはゼロ。ダイハツはトヨタのOEMである「アルティス」が唯一のセダンとなります。
ただし、ホンダは「シビック」「インサイト」「アコード」の3台を販売中です。スバルは「インプレッサG4」「WRX S4」の2モデル。マツダは「マツダ3セダン」と「マツダ6セダン」の2モデルを擁します。
とはいえ、これだけあってもランキングの50位までに入るのは「カローラ」「プリウス」「インプレッサ」「クラウン」「マツダ3」だけ。こんな絶不調の中で、「クラウン」を存続させるには、車形を複数用意するというのは、避けられなかったのでしょう。「セダンの伝統が……」という前に、存続の危機に陥っていたわけですから。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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