日本のクラウンから世界のクラウンに その戦略を解剖する(2):池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/7 ページ)
1955年のデビュー以来67年15世代に渡って、クラウンは日本国内専用モデルであり続けた。しかし国内のセダンマーケットはシュリンクの一途をたどっている。早晩「車種を開発生産していくコスト」を、国内販売だけで回収することは不可能になる。どうしてもクラウンを存続させていこうとすれば、もっと大きな世界のマーケットで売るしか出口がない。
トヨタブランドのフラッグシップである、クラウンのモデルチェンジを追う短期集中連載の1本目では、最初にセダンとはそもそも何なのかを定義した。
- 大人4人とその荷物をしっかり乗せられること
- 高速移動を可能にする低重心パッケージ
- TPOを選ばないフォーマルなスタイル
その上で、1985年デビューのメルセデス・ベンツEクラス(W124型)セダンを基点に、直近3世代のクラウンについてデザインを軸に分析した。今回の2本目は4つのボディタイプで考える世界戦略の話をしようと思う。
新型クラウンの4車種。左からクロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート。今年10月のクロスオーバーを皮切りに、この先1年半で残る3台がリリースされる(トヨタ提供 撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)
国内専用モデルであり続けたクラウン
1955年のデビュー以来67年15世代に渡って、クラウンは日本国内専用モデルであり続けた。大筋としてはそういう理解でいい。実はデビュー直後から少量ながら左ハンドルモデルもあり、近年では中国への輸出も行われていた。
なので、なぜ今回のモデルで殊更に「グローバルカーになった」と騒ぐのか解せない人もいるかもしれない。端的にいえば、過去15代のクラウンは、全て日本マーケットの都合で作られている。それをして国内専用モデルといっているわけだ。具体的にいえば、それは主に車両寸法に表れる。全幅1800ミリ、全高1550ミリは、ここしばらく、絶対防衛ラインとされてきた。
東京でいえば銀座、大阪なら梅田、名古屋なら栄辺りにある老舗の百貨店の駐車場をちょっと思い出してほしい。昭和の香りただようああいう百貨店の駐車場へ、昨今の大型化したクルマで行くと、神経をすり減らすほど狭く感じる。それらに比べれば多少マシではあるものの、そもそもトヨタ自動車の東京本社の地下駐車場にしてからが、RAV4あたりだとサイズ的に「ちょっと嫌だな」と思うような設計だ。これがランクルになると、もう強いストレスを感じる。
当然、普段車両を保管する駐車場も、こうした時代に作られたものがまだまだたくさんある。都心の狭小住宅など、敷地をパズルのように使っていることも多く、家屋そのものを建て直さなければ駐車場は拡大できない。日本の交通インフラはかつて高度経済成長時代に作られた。その時代のクルマは小さかったのである。
日本のフラッグシップを自任してきたクラウンとしては、こうしたインフラを無視してボディサイズを拡大するわけにはいかなかった。しかし、これは日本独自の制約であって、世界はそれと関係ないところで動いている。
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