日本のクラウンから世界のクラウンに その戦略を解剖する(2):池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/7 ページ)
1955年のデビュー以来67年15世代に渡って、クラウンは日本国内専用モデルであり続けた。しかし国内のセダンマーケットはシュリンクの一途をたどっている。早晩「車種を開発生産していくコスト」を、国内販売だけで回収することは不可能になる。どうしてもクラウンを存続させていこうとすれば、もっと大きな世界のマーケットで売るしか出口がない。
初代から新型までのクラウンのサイズの変化
表は、初代クラウンから新型のクラウン・クロスオーバーまでの車両寸法を筆者がまとめたものだ。モデルによってはボディタイプがいくつかあり、それによって数値が異なったり、AWDモデルは車高が違うなど、まあ細かく見ればいろいろ矛盾も含んでいる。しかも元データはWikipediaと来たもんだから、データの精度は求めてはいけない。けれどもここでわざわざこんな表を作ったのは、時代毎に何がどのくらい変わって、何が変わらないのかをざっくり押さえたいからである。その程度の用ならこれで果たせるはずである。
全長は6代目までじわじわ拡大し、そこで長年足踏みをしたあと14代目で一気に長くなった。
全幅は、5代目までキープ。6代目で1700ミリの壁を越えるや、以後じわじわと成長し、14代目で1800ミリに到達。新型でこれが一気に爆発した。
全高に関しては、ずっと行ったり来たり、成長というよりは、各世代のデザインのあり方で、変化し続けて来た。そこに明確な意図を持って一気にルーフ高を上げたのが今度のクラウン・クロスオーバーである。それでも立体駐車場1550ミリの制限ギリギリには抑えてきている。
ホイールベースは、後席膝元の空間に如実に効いてくる。一方で、これを無闇に延伸すると最小回転半径が大きくなって取り回しし難くなる。そこがせめぎ合いのポイントなのだが、これは明らかに世代を追って徐々に伸びている。15代目で一瞬ドンと伸びたあと、新型で元の鞘に収まった形である。
インフラの制約を受けつつも、商品はつまるところマーケットで戦う以上、ライバルとの攻防もある。前回書いた通り、室内寸法でミニバンに突き放されている局面で、この制約を抱え続けてきたことがクラウンにとって大きなハンデになっていたのである。
しかも、国内のセダンマーケットはシュリンクの一途をたどっている。早晩「車種を開発生産していくコスト」を、国内販売だけで回収することは不可能になることは目に見えている。という中で、どうしてもクラウンを存続させていこうとすれば、もっと大きな世界のマーケットで売るしか出口がない。という点を行きつ戻りつして呻吟した結果が、今回の大変貌を生み出した。
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