プラチナバンドを譲渡せよ、ただし費用は負担しない 楽天モバイル巡る見えない着地点:房野麻子の「モバイルチェック」(3/3 ページ)
楽天モバイルが免許取得を求めるプラチナバンド。しかし、既存免許人である大手3キャリアと楽天モバイルで考え方の乖離(かいり)が大きく、どこに妥協点を見出すかが注目されている。
狭帯域の活用を検討するべきという意見も
楽天モバイルと大手3社の意見は一致しない点が多く、10月1日に改正電波法の施行が迫っている中で、どう収拾をつけるのか先が見えない状態だ。ただ、9月12日の第11回会合では、フィルターの挿入については多少の歩み寄りも見られた。楽天モバイルはフィルターが不要との考えだが、必要となった場合は、プラチナバンドにおける基地局開設計画を3社に開示し、それに合わせて3社がフィルターを設置できるようにするという案を提示した。そうすれば、楽天モバイルは1年以内にプラチナバンドを使ったサービスを開始でき、3社とも電波干渉を防げるという考えだ。とはいえ、費用負担についての考えは変わっていない。
また、そもそも既存3社は、各社から5MHz幅の帯域を割譲する案に依然として反対の姿勢だ。ソフトバンクは900MHz帯の免許を11年に獲得したが、その際にはプラチナバンド割り当て前に人口カバー率99.9%、契約者数は2784万に達していたことを示した。
また、最近の総月間トラフィック量を周波数の帯域幅で割った帯域のひっ迫度において、楽天モバイルは4キャリア中で最も低い数字になっていることも指摘した。楽天モバイルは今持っている1.7GHz帯をまだ十分活用しきっていないという意見だろう。
タスクフォースの構成員からは、楽天モバイルの周波数のひっ迫度を考慮すると、15MHz幅は必要ないのではないかという意見も出た。プラチナバンドは空き帯域が少ないとはいえ、LTEの規格上は1.4MHz幅、3MHz幅でも利用できる。ひとまず狭帯域の活用を検討するべきではという意見は既存キャリアからも出ている。ただ、これに対しても楽天モバイルは、狭帯域に対応した機器のエコシステムがなく厳しいと反対している。
また3社からは、プラチナバンドの再割当てによる工事などの対応によって、5Gの人口カバー率を2023年度末に95%にするといったデジタル田園都市国家構想が後退する可能性があるという懸念も出された。
このタスクフォースの会合は、携帯電話事業者、構成員間で活発に意見が交わされ、非常に白熱したものとなっている。ただ、非公開も含めて10回以上の会合が行われているにもかかわらず、意見はほとんどまとまっていない印象を受けた。ドコモからは「ステークホルダー間での調整は非常に難しい。ぜひ国が主導で対応策、移行期間、移行費用の負担、あるいは決裁も含めて、ぜひ国が主導でコンセンサスを作り、結論を導いていただきたい」との要望もあった。プラチナバンドの再割当てがどのように決着するのか注視したい。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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