静岡県下田に移住者が集まる必然性 キーパーソンは”よそ者”(2/4 ページ)
静岡県下田市に移住する人が増えている。コロナ禍の影響があるとは言え、2018年に比べて約7倍に上る。なぜ移住希望者が増えているのか、滞在を通して理由を探った。
下田で起業を検討 なぜ
「てとてとしもだ」は、LAC会員と地元の人をつなぐ目的で、LIFULL社員兼LAC会員の小酒友毬さんが企画した。土曜の夕方、コミュニティマネージャーの松橋樹さんが運営するコーヒースタンドの周りに自然と人が集まり、ゆるりとイベントが始まった。
会員同士がコーヒーを片手に、どのような1日を過ごしたのか、どのような目的で来たのか、普段何をしているのかなどを話していた。歩道に面したテラスで開催されていたため、観光客や地元の人がちらちらとこちらを見ていた。
「さまざまな会員さんが訪れて比較的長期で滞在されるので、この場所自体は盛り上がっています。ただ、この場所に地域の方が遊びや仕事をしに来たり、観光で訪れた方がより伊豆下田に興味を持ったりするような取り組みはまだ十分にできていません。このコーヒースタンドも正式な営業開始は9月なので、現在は会員以外に振る舞えないんです」(松橋さん)
拠点に人を呼び込めてはいるものの、まだその影響力は小さいようだ。冒頭で紹介した通り、下田市への移住者数は増えているが、盛り上がりを見せているのはまだ一部という現実を実感させられた。
日暮れ前に市内の旧町内エリアに移動した。約500個の竹灯籠を自由に並べ、火を灯す「竹たのしみまくる下田」という地元民が運営するイベントに参加するためだ。夏以降に減少する観光客の誘致や放置林対策を狙いとしているという。イベント参加者の一人で、下田で起業準備を進めている東京出身の男性に話を聞いた。
検討している事業内容は、子どもが親に感謝を伝えるようなイベントの企画・運営だという。結婚式のようにリアルな場での開催を考えた時に「下田」でやりたいと思ったと話す。
「下田に住む人は協力的な人が多いと感じます。自分は全くのよそ者ですが、そんなことを感じさせる人はいません。むしろこういうことがしたいと相談すると、やってみなと背中を押してくれたり、詳しい人を紹介してくれたりします」
筆者と同時期にLACの伊豆下田拠点に滞在していた女性にも話を聞いた。医療系の専門職を退職し、現在は宮城県気仙沼市でゲストハウス立ち上げに取り組んでいるという。パートナーに誘われての滞在とのことだったが、伊豆下田拠点のコミュニティの在り方や地域住民との関係構築は自身のゲストハウス運営にも通ずるものがあるだろう。
ただテレワークプランがあるようなホテルに滞在するワーケーションでは出会えなかった人や情報に触れることで、下田をただの滞在場所としてではなく、より身近な存在として認識するきっかけになるように感じた。
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