年間売り上げ4億円 秋田のソウルフード「バナナボート」が60年以上も売れ続けるワケ:地域経済の底力(3/3 ページ)
「学生調理」「アベックトースト」「コーヒー」、そして「バナナボート」。一度聞いたら忘れないネーミングが面白い、秋田市に本社を構える「たけや製パン」。同社はなぜここまで秋田の人たちに愛されるのか。60年以上も売れ続けるワケに迫る。
秋田のソウルフードを全国へ
順風満帆に見えるたけや製パンにもビジネス上の課題はある。これだけ消費者に愛されて、売れる商品も多いのに、基本的には秋田県内でしか販売していないことである。商品が話題になるにつれ、県外からの引き合いも強まっていることを受けて、同社は今年2月にパンの通信販売を本格的にスタートした。
まだ売り上げは微々たるもので、月50万円程度。それでもテレビ番組などで紹介されると、何倍にも跳ね上がる。売れ筋はやはりバナナボートで、100個セットという大胆な売り方もしている。
通販の強化によって秋田のソウルフードを全国へ展開する。そこには背に腹は代えられない事情もある。
総務省の人口推計データ(21年10月時点)によると、秋田県の人口減少率は9年連続で全国トップ。急速な人口減によって今後も県内市場は縮小する一方だろう。そうした点でも、外に打って出て、市場を拡大しなければならない。それはたけや製パンのビジネス成長のためだけではなく、秋田のためでもある。
「秋田の人は人情味があって、人っこもいい。海や山が近く、おいしい食べ物もある。一生住み続けたい町です。東京と同じように豪華にするのではなく、秋田らしさをどんどんアピールしていきたい」
故郷・秋田への思いをこう語る武藤社長。たけや製パンの商品を全国に広めていくことが、自らにとって一番の地域貢献だと信じて疑わない。
著者プロフィール
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
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