非常時のローミングやSIMなし緊急通報はなぜ実現困難なのか? KDDI大規模障害で注目:房野麻子の「モバイルチェック」(6/6 ページ)
7月2日に発生したKDDIの大規模障害。そんな中、注目を集めているのが、障害時などに臨時的にほかの事業者のネットワークを利用する「事業者間ローミング」だ。
SIMなし緊急通報ではコールバックができない
しかし、SIMがない状態での緊急通報で課題になるのが、呼び返しに当たるコールバック機能だ。
SIMなし緊急通報では、AttachもRegistrationも行わないで通報する。通報する瞬間だけイレギュラーに携帯電話ネットワークを利用していることになる。通報が終わるとイレギュラー状態は終了し、携帯電話ネットワークからいなくなってしまう。コールバックしようとしても、携帯電話ネットワーク上に端末がいないので呼び出せない。これでは法律が求める機能を実現しないことになるので、日本ではSIMなし緊急通報ができないというわけだ。
法律の問題であれば、規制緩和すればSIMなし緊急通報が可能になるかもしれない。ただ、「規制緩和するだけでいいのか。コールバックが使えないけれど、それでいいのか。通報を受けて出動し、本当に救助に行けるか、救急車がスムースに到着できるかという問題が出てくる」(堂前氏)。
「通信事業者と総務省だけで良い/悪いを判断するのではなく、通報を受理し、出動する機関との議論も必要ではないか」と堂前氏は指摘している。また、通報する我々ユーザーも、何を優先するか考える必要がある。「障害が起こったときに通信を確保することも重要だが、出動した消防車や救急車に確実にたどり着いてもらうことも重要。どちらを優先するかを考えていく必要がある」と同氏は言う。
さらに、いたずらの緊急通報の問題がある。今はいたずらした通報者が逮捕されることもあるが、SIMなし緊急通報が実現すると、こうしたいたずらへの対応が困難になると考えられる。
9月28日から行われる総務省の検討会には、外部有識者や携帯電話事業者に加え、緊急通報を取り扱う機関も参画する。検討会でどんなことが話し合われ、決められていくのか注目していきたい。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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