「目標未達に慣れた」社員たち やる気に火を付ける、たった1つの方法:Q&A 総務・人事の相談所(1/3 ページ)
【Q】売上高と経常利益の目標を立てていますが、いまだに一度も達成したことがありません。社員は達成できないことに慣れてきたように感じます。何か良い方法はありませんか。
連載:Q&A 総務・人事の相談所
総務や人事の現場で起こる疑問を、Q&A形式で回答します。
Q: 当社では、5年前から目標管理を実施しています。売上高と経常利益の目標を立てていますが、いまだに一度も達成したことがありません。
導入した当時、一部の社員から「そんな目標は無理ですよ」と反対されました。最近はおとなしく目標を受け入れるようになりましたが、その代わり達成できないことに慣れてきたように感じます。達成率を上げるために、何か良い方法はありませんか。
どうすれば、社員に目標達成させられる?
A: 未達慣れは「達成できなくても解雇されるわけではない」「どうせ他の人も達成できない」と学習してしまうことで起きます。達成までの計画を自ら立てさせ、その後は自己採点させることで、達成率を上げられます。
目標管理で効果を得るには
目標管理は最も普及している評価手法です。労務行政研究所が2021年に実施した「人事評価制度の最新実態」調査によると、一般社員について89.6%、管理職について90.5%の企業が実施しています。
ロジャースとハンターが1991年に行った、目標管理に関する70件の研究結果のメタ分析(複数の研究結果の、一層の分析)では、97%の研究で目標管理が生産性の向上をもたらしていました。そのうち生産性の向上率を測定していた研究では、平均して45%向上していました。
このように目標管理は生産性向上に大きな効果がある反面、正しい方法で行わなければ効果が得られません。
売上高と利益の目標だけでは不十分
目標管理において最も難しいことは目標を立てることであり、さらにその中でも一番難しいのは全社目標(会社全体として追求する目標)を立てることです。
まず、全社目標はバランスに配慮する必要があります。どんな企業でも目標を立てていますが、売上高と利益の目標しか立てていないケースが大半です。これは野球に例えるなら、監督が単に「勝て」とか「点を取れ」とかいうことしか指示していないのと大差ありません。選手が知りたいのは勝つため、点を取るために何をすれば良いのかです。
キャプランとノートンが提唱した「バランス・スコアカード」という理論があります。高い業績を上げ続けている企業の目標を分析した結果としてまとめられました。
これによると、目標は下記の4つの視点でバランス良く設定する必要があります(ロバート・S. キャプラン、デビッド・P. ノートン『バランス・スコアカード―戦略経営への変革』生産性出版、2011年)。表はこれらの目標の例です。
- (1)財務の視点
- (2)顧客の視点
- (3)社内ビジネスプロセスの視点
- (4)学習と成長の視点
財務の視点とは、売上高や利益など、財務諸表に表れる数字の視点です。これらの目標だけでは不十分ですが、必要な視点です。
顧客の視点とは新規顧客獲得数や顧客定着率、リピート率など、どういう顧客をどれだけ持つかという視点です。「顧客の視点に立って物事を考えよ」というような意味ではありません。
社内ビジネスプロセスの視点とは、新製品投入件数や納期遵守率、不良品発生率など、社内での仕事の進め方の視点です。この視点の目標には、会社側にとって望ましいことを設定することはもちろんですが、顧客にとって望ましいことも必ず一つ入れます。
学習と成長の視点とは、社員定着率や資格取得率、年休取得率など、社員の能力開発や満足度の視点です。この視点の目標も、会社側にとって望ましいことだけでなく、社員側にとって望ましいことも入れます。
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