ファンが地方鉄道を支援、今後はサブスクも? 鉄道系クラファンの新潮流:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)
大井川鐵道が、蒸気機関車を完全修復し、本線を走らせるために、1億円のクラウドファンディングを開始した。近年、鉄道事業者による車両の動態保存を目的としたプロジェクトが増えている。この仕組みを使って、既存の保存車両の修繕プロジェクトをつくれないだろうか。
保存車両団体連合と継続支援の枠組みを提案する
この仕組みを使って、既存の保存車両の修繕プロジェクトをつくれないだろうか。私はかねてより、車両保存プロジェクトで成功しても、車両が修繕されずに朽ちていく姿を残念に思っていた。プロジェクト主催者がもう一度、修繕プロジェクトを立ち上げたら参加するつもりだけれども、そういう話はない。保存を助けてもらっただけでありがたい、これ以上は頼れない。あとは自分たちで……というつもりかもしれないけれど、意地を張っている間に、使わない道具は朽ちていく。
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日本の鉄道文化遺産を保存する団体として「日本鉄道保存協会」がある。1990年に設立され、現在は横浜歴史資産調査会の内部組織である。会員は鉄道事業者や保存管理団体など52団体だ。運営費用は、会費、賛助会費、寄付金でまかなっている。主な活動は勉強会、親睦会、鉄道遺産の文化財登録支援などのようだ。いまのところ広く市民に寄付金を募るとか、個別の保存車両プロジェクトに対する支援などは行なわれていない。
このような公益団体にリーダーシップを取ってほしいし、クラウドファンディングサイトと連携する方法もアリだ。しかし協会の趣旨とは異なるとしたら、クラウドファンディングサイトを使った継続支援を提案したい。
まず維持費を必要とする鉄道遺産管理団体が連合する。連合体がクラウドファンディングで支援金を募る。返礼品は支援証の提供だ。この支援証があれば、それぞれの鉄道遺産団体のイベントの案内や有料イベントの割引を受けられる。鉄道保存施設である各地の鉄道博物館に協賛してもらい、入館料を割引してもらう。集客にもつながるし、保存施設とのつながりも深まる。
鉄道ファン向けのビジネスを展開する企業も、集客手段として協賛、活用してほしい。それじゃ売り上げが減る、資金繰りに困るというなら、それこそクラウドファンディングで支援を呼びかけよう。それが互助の精神というものだ。
集まった支援金の分配方法が難しい。例えば各団体が管理する保存車両の数と年式によって係数を設定して配分する。50年前の車両を5、40年前の車両を4……、10年前の車両を1として計算する。参加団体のすべての車両の和から、各団体の持ち車両の数で配分を決める。これが明確で公平かもしれない。足りないぶんは個別にクラウドファンディングを立ち上げるとして、この方式なら定期的に維持費の支援を受けられそうだ。
せっかく保存に成功した鉄道車両が朽ちていく様子を見ると悲しい。それだけに修復に従事する人々を尊敬するし、何か支援できる方法を探りたい。クラウドファンディングで良い答えが見つかればいいと思う。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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