ファンが地方鉄道を支援、今後はサブスクも? 鉄道系クラファンの新潮流:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
大井川鐵道が、蒸気機関車を完全修復し、本線を走らせるために、1億円のクラウドファンディングを開始した。近年、鉄道事業者による車両の動態保存を目的としたプロジェクトが増えている。この仕組みを使って、既存の保存車両の修繕プロジェクトをつくれないだろうか。
次のキーワードは「サブスクリプション」保存車維持を支援したい
目標金額の増加と鉄道事業者の参加のほかに、新たな傾向も見られる。「継続寄付(サブスクリプション)」だ。プロジェクト単体ではなく、プロジェクト実行者に対して継続的な支援を実施する方式だ。例えば「貸切乗車団CFプロジェクトチーム」が始めた「【鉄道会社に届ける】貸切乗車団のさぶすく!みんなで電車を楽もう」は、貸し切り列車の運行で鉄道事業者を支援しようというプロジェクトだ。
「貸切乗車団CFプロジェクトチーム」は前出のリストの「還暦の赤プロジェクト」で貸し切り列車を運行したことをきっかけに結成された団体である。マンスリーサポーターになると、月額1000円で活動報告を受け取れる。月額3000円でイベント先行案内。月額5000円を6カ月以上継続するとイベント参加費用の割引及びオリジナルカレンダーが提供される。月額1万円で支援総額3万円を超えるたびにイベントに無料招待となる。
主催者の企画力と実行力が求められるけれども、支援者が増えれば、それが鉄道事業者に対して理解と信用につながるだろう。良い循環ができそうで期待できる。10月5日時点の支援者は31人。
鉄道系の継続寄付ではもう1つ「おかえり沼牛駅実行委員会」の「北海道の豪雪地帯、旧・深名線『沼牛駅』木造駅舎を継続して守りたい!」がある。16年に実施した「北海道に現存する築87年の旧木造駅舎を修繕し後世へと守り継ぐ!」で、廃止された路線の駅舎を保存するために立ち上げられたプロジェクトで、目標金額200万円に対して172人から239万円を集めた。
「おかえり沼牛駅実行委員会」はこのプロジェクトを引き継いで、維持費を継続寄付形式で募集している。月額500〜1000円で感謝のメールとSNSの活動報告、月額5000〜1万円で公式サイトに名前掲載。在の支援者は2人で、もう少し返礼品に工夫があれば増えるかもしれない。
鉄道系の継続寄付はまだ始まったばかり。伸び代はありそうだ。返礼品を継続的に提供する形は実行者の負担も大きいけれども、READYFORには寄付金控除のシステムもある。実行者が寄付金控除の対象となる団体であれば、支援者は所得税について寄付金控除を受けられる。
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