儲けを取るか、顧客を取るか 苦境続く新電力 石川電力の自己破産は氷山の一角?:一部で「市場連動型」導入進む(1/2 ページ)
10月4日に自然電力がサービス終了を発表し、10月6日には石川電力の自己破産が報じられるなど、苦境が続く新電力。最近では収益性向上のために「市場連動型」の料金プランを導入する企業も出始めているが、茨の道といえそうだ。
10月6日、一部報道で石川電力(金沢市)が4日までに事業を停止し、自己破産申請をする準備に入ったと明らかになった。同社は8月31日をもって電力供給を停止すると既に発表していた。仕入れ価格が販売価格を上回る“逆ザヤ”状態が続き、収益性が悪化したことが原因とみられる。
石川電力は、新電力企業の一つだ。新電力とは、電気の小売り業への参入が全面自由された2016年4月以降に参入した小売り電気事業者を指す。その多くが、自前の発電施設などを持っておらず、設備投資費用を抑えられることなどから、割安な料金を売りに顧客を獲得してきた。
しかし、こうした状況は変化しつつある。帝国データバンクが6月に発表した調査結果によると、21年4月までに登録があった新電力会社706社のうち、1割超の104社が倒産・廃業、または電力事業の契約停止などを行うなど、新電力各社の苦境が続いている。10月4日には、再生可能エネルギー由来の電力を供給していた自然電力が「自然電力のでんき」のサービス終了を発表。17年に電力小売りへ参入したが、価格などの維持が困難と判断した。
新電力各社のビジネスモデルは、あくまで電力需給が安定した“平時”に限ったものといえる。発電施設を持たない各社は、発電施設を持つ電力会社から調達したり、日本卸電力取引所(JEPX)を通して調達したりしているケースが多いからだ。そのため、エネルギー価格の高騰や、国際情勢の不安定化の影響を受けやすい。直近では、ロシアによるウクライナ侵攻、LNG(液化天然ガス)価格の高騰、また国内では発電所の老朽化による需給悪化など、向かい風が多い。
高騰する電力の調達費用を吸収しようと、最近では市場連動型の料金制度を導入する新電力も出始めている。
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