ポルシェの上場が“今さら”ではなくベストタイミングだったといえるシンプルな理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/4 ページ)
ドイツの老舗企業・ポルシェが9月29日、同国フランクフルト証券取引所に上場した。通常、株式上場といえば新興企業の登竜門と目されるイベントだが、なぜこのタイミングで上場したのか。
ドイツ発の高級スポーツカーを専門とするポルシェ(Dr. Ing. h.c. F. Porsche AG)が先月29日、ドイツ・フランクフルト証券取引所に株式を公開した。証券コード(ティッカーシンボル)は「P911」で、ポルシェの傑作と名高い911型を掲げるというポルシェならではの粋さにも抜かりがない。
同社における時価総額の規模は日本円換算で10兆円と、近年でも超大型のIPOとなっている。公開価格が82.50ユーロで、足元では86.40ユーロ(10月5日終値)と小幅上昇している。
株式上場は、若いベンチャー企業における成功の象徴といった印象が強いかもしれないが、それはあくまでおまけのようなもので、本質は資金調達である。むしろ、株式上場はベンチャー企業よりも安定的で熟した企業の方が有利に働きやすい側面もある。今回のタイミングも、そう考えるとあながち不思議ではない。しかし、上場の目的が資金調達であるとするならば、「上場せずに10兆円という企業価値を蓄えられたポルシェが、なぜ今わざわざ上場したのか」と思われる方も多いだろう。
自動車業界は米テスラ・モーターズを筆頭としたEVシフトの機運が高まっており、ポルシェが本拠を構えるEUでも、2035年までにガソリン車の新車販売が禁止になる予定だ。そうするとポルシェがここから競争優位性を保つ上でEVへの投資が必要となってくる。
では、なぜ上場できるのにそれを長年行わない企業があるのか不思議に思う方も少なくないだろう。実は、上場にはさまざまなデメリットもある。しかし検索するとすぐに出てくるような上場のデメリットを並べても面白味に欠けるので、今回はあまりちまたで語られていない、上場時の「安値売り」デメリットについて触れていきたい。
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