仕事はデキるが、部下はげっそり──「精神的パワハラ」を繰り返す上司はなぜ生まれるのか?:パワハラ=体育会系だけではない(3/4 ページ)
「舌打ちされたことがショックで1日中仕事になりませんでした」――こう話すのは、中堅メーカーの総務部に勤める黒川さん(仮名、22歳女性)です。黒川さんは大学を卒業後、新卒として現在の会社へ就職しました。
デキる上司ほど陥りがちなワケ
殴る・蹴るがダメだということは誰でも分かるでしょう。だから、大抵の人はここは我慢ができるのです。ところが、暴力がダメなら「何とか精神的な苦痛を与えてやろう」と必死になってしまう人がいます。
特に、社内のエースなど仕事ができる人、スキルが非常に突き抜けている人が部下を持つと陥りやすい傾向にあります。「自分なら簡単にできることなのになぜできないのか理解できない」と考えてしまうので、部下が失敗する姿や、成長しない姿を見てイライラが募ってしまうというわけです。
いわゆる体育会系のノリだとここで手は出ないまでも大声で怒鳴り上げてしまい、それがパワハラとなってしまうことがあります。しかし、ここで優秀な上司はそれを逃れるために間違った考えをしてしまいます。「暴力や大声はパワハラだからそうならないようにやってやろう」と。もはや、育成や教育という目的は姿を消し、いかにイライラを解消するかに思考がシフトしているのです。
・「ちっちっち」舌打ちの連打
・「はあ〜あ」無駄に大きなため息
・「……」完全無視
これらは、繰り返し行うことによりパワハラに該当する可能性が高くなります。冒頭の黒川さんは、仕事が手につかない状態になるほど職場環境を害されてしまったといって良いでしょう。
・「お前、昔からモテないだろ」
・「小学生の方が仕事できるよ」
まったく仕事とは関係ないせりふです。人格否定の典型でしょう。
・「あいつを飲み会に誘うのはやめよう」
・「LINEのグループから外そう」
典型的な人間関係の切り離しです。
・「これ全部終わるまで帰るなよ」
到底終わる見込みのない仕事を押し付けるなどは過大な要求になります。
・「とにかく座ってればいいから」
一方、まったく仕事を与えないような行為もパワハラに当たる可能性があります。
・「LINEのトークを全部見せろ」
スマホをしつこく見せるように迫る、彼氏や彼女のことをしつこく聞くなどは“個の侵害”に当たりパワハラとなる可能性があります。
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