仕事はデキるが、部下はげっそり──「精神的パワハラ」を繰り返す上司はなぜ生まれるのか?:パワハラ=体育会系だけではない(2/4 ページ)
「舌打ちされたことがショックで1日中仕事になりませんでした」――こう話すのは、中堅メーカーの総務部に勤める黒川さん(仮名、22歳女性)です。黒川さんは大学を卒業後、新卒として現在の会社へ就職しました。
気付いたらパワハラをしてしまったことも
パワハラの具体例として次の6つの類型に整理されています。
(1)身体的な攻撃
殴る、蹴るなど一番イメージしやすいケースです。空気椅子で仕事をさせるというのもこれに該当します。ただし、同僚間の単なるけんかによる攻撃は傷害ではありますが、パワハラには該当しません。
(2)精神的な攻撃
容姿をはじめ人格を否定するような言動はパワハラになります。ただし、遅刻や服装の乱れなど、会社のルール違反を注意する行為、もしくは再三の注意にもかかわらず改善しない部下に対し強く注意するようなケースはパワハラとはなりません。
(3)人間関係からの切り離し
仕事から外す、渡さない、無視する、仲間外れにする、別室に隔離するなどがこれにあたります。もちろん、社員研修など必要に応じたものは問題ありません。
(4)過大な要求
到底達成できるはずがないような目標を立てさせたり、無謀なノルマを課す行為、まるで英語が出来ない部下に対して、英語が必須な業務にわざわざ就かせるような行為はパワハラとなる可能性があります。なお、目標設定の場でよく行われる“少し背伸びした目標設定”などはパワハラにはなりません。
(5)過小な要求
あからさまに程度の低い単調な仕事を意味もなくさせ続けることは、パワハラとなる可能性があります。ただし、経営上、必要に応じてやむを得ずそのような仕事に就かせることはパワハラとはいえません。
(6)個の侵害
プライベートを執拗に詮索したり、飲み会にしつこく誘うなどのケースが該当します。会社として社員への配慮のために、家族構成や状況のヒアリングを行うことは問題ありません。
ここまで、定義と具体例を確認しましたがいかがでしたか? 「いや〜よく理解できた」という人もいるかもしれませんが、大抵の人は「当たり前のことしか書いてなかった」という印象ではないでしょうか。
とはいえ、現場ではパワハラと思しき事案が少なからず発生しているのも事実です。つまり、頭では理解していたつもりだったはずが、気が付いたらいつの間にかパワハラをしてしまったということがあるわけです。
関連記事
- 「仕事を調整したのに部下の残業が減りません」 働き方を観察して見えた意外な事実
「これだけ仕事を減らしたのになんで残業時間が変わらないんだ?」――狐につままれたかのようにつぶやいたのは、4月に総務部長に就任した木根さん(仮名、49歳男性)です。就任後最初の課題として取り組んだのは、部下の町本さん(仮名、32歳男性)の残業時間の削減でした。就任後にいろいろと試みたものの、思ったほどの効果が上がらずお手上げ状態になってしまったそうです。 - 部下を叱るとき、「絶対に使ってはいけない」NGワードを教えてください
部下を叱るときに、つい厳しい口調で言ってしまうので、不適切な発言が入っていないか心配です。叱るときに「絶対に言ってはいけない」言葉を教えてください。 - 上司に大激怒される「悪い残業」と評価される「良い残業」 その違いとは?
「残業しただけなのに怒られるなんて思ってもみなかったです」――納得がいかないと愚痴をこぼすのは、とある出版社で営業をしている佐藤さん(仮名、30歳男性)です。 - 「手に負えませんよ」 アイデアがない残業だらけの会社で起きた「時短」の裏側
「働き方改革」がメディアに登場することが多くなるにつれ、長時間労働の是正に本腰を入れ始める会社が増えていきました。それと同時に、人材を確保するためには、働く環境の改善に取り組まざるを得なくなったことも大きな要因でした。時短に向けた取り組みは各社さまざまです。その一方で、「時短はしたいが特にアイディアがない」なんていう会社があるのも事実です。そんな会社ではこんなことが起こっています。 - 「いつでも全力で走る」「オレの背中を見てくれ」 意識高い系“ブラック社長”の落とし穴
「オレはこの国の未来を輝かせたい」。出版関係の会社を経営するA社長は、この目的を達成するために本気で考え、本気で行動しています。A社長自身の理念を会社の理念とし、社員に対し熱く語ることで想いを浸透させてきました。長時間労働も、深夜残業も、休日労働も、激しい叱責も「すべては”日本の輝く未来のために”避けては通れない」という幻想を抱き、それをすべての社員が受け入れていると思いこんでいました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.