「お互いうまくやろうぜ」パワハラを助長する同僚──日本特有の「いじめ構造」の闇:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
なぜ、職場でのパワハラはなぜなくならないのか? パワハラ被害に遭い、「自分が悪いのだろうか」と考えるまでに追い詰められた42歳男性の事例をひもとくと、日本企業ならではのパワハラの構図と、パワハラ防止策が無意味に終わりがちな理由が浮かび上がってきた──。
パワハラ防止策が「無意味」になる理由
「さわらぬ神にたたりなし」という言葉があるように、いじめを目撃しても「自分には関係ない」と放置したり、遠くから乾いた笑いを浮かべながら見守ったり。あるいは、「倫理委員会に報告したら、報復措置をとられるかもしれない」と考えたり。
そんな見て見ぬふりをする同僚たちの行動が、いじめられている人をさらに追い詰める。誰にも言えなくなる。逃げる気力ない。そして、傍観者は傍観者にさらに徹していくのです。
パワハラ防止法が中小企業にも適用されて半年がたち、相談窓口を設置したり、社内コンプライアンスを徹底する企業も増えてきました。
しかし、どんな制度も仕組みも、「その場」にいる人たちが、どう行動するか? で、無意味な制度に成り下がります。
とりわけ今のようにギスギスとした社会では、誰もがパワハラの加害者になるリスクも、被害者になるリスクもあります。そのリスクを下げるためにも、「自分ははやし立てる人になっていないか?」「私は傍観者になっていないか?」と自問することを、忘れないでほしいです。
だって、誰もが、家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんなのですから。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
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