なぜ「怒り」を抑えられないのか 明石市長を暴走させた「イライラの正体」とは:“沼る”ビジネスパーソンの共通点(3/3 ページ)
暴言の責任を取り、政治家引退を表明した兵庫県明石市の泉房穂市長。実績を評価する声があがる一方で、近年はハラスメントに厳しい視線が向けられ、企業にもパワハラ防止措置が義務付けられる時代。人はなぜ怒りを抑えることができないのか。
怒りっぽいのは性格の問題?
――怒りっぽいのはその人の性格によるところが大きいのでしょうか
川田: 性格もあります。正義感が強かったり、せっかちだったり。そういう部分もありますが、幼い頃に両親から教わった習慣、学校の先生から習ったこと、信頼する上司先輩から教わったことがベースになっていることが多いと思われます。
それに加えて、先ほど述べたストレスや寝不足、不安などが絡みます。だから怒りっぽい人は、不安を抱えている人が多いと思います。今はとりわけ、コロナ禍や円安、物価高、仕事上のプレッシャーなど、不安要素が多いですよね。いろいろな不安から、イライラを募らせている人は多いと思います。
――川田さんが過去に見てきた事例で、怒りが原因で大きな失敗に至ったケースがあれば教えてください
川田: これはまさに私自身の事例になります。かつての私は、正義感が強くせっかちな性格でもあり、何かしらイライラしていました。当時、セキュリティ機器の営業担当をしていましたが、仕事の依頼がくると「なぜ俺がしないといけないのか」「とばっちりを受けた」と、常に何かのせい、誰かのせい、環境のせいにしていました。ある大きなプロジェクトのリーダーを任されていたのですが、怒りが原因で部下に強く言いすぎてしまい、プロジェクトの担当を外された経験もありました。
――今の柔和な川田さんからは想像がつきません
川田: 当時は私生活でも何かに対して文句を言っていました。例えば、電車に乗るために整列乗車のルールを守っていて割り込みされると怒りを感じたり、電車の車内が混んでいるとき、新聞やスマホを見るための自分のスペースを確保したくてイライラしたりする。ほかにも路上喫煙をしている人や、ごみのポイ捨てをする人など、そういうところが目につきすぎてしまうのです。
イライラして歯を食いしばったり、夜は歯ぎしりをしたり、寝られなくなるほどでした。これではまずいと思い、書店に赴き、たまたま見かけたのがアンガーマネジメントに関する書籍でした。
連載の後半では、ビジネスパーソンが実践できるアンガーマネジメントの手法を詳しく紹介する。
川田裕輔(かわた・ゆうすけ)
1977年生まれ。埼玉県熊谷市出身。東京都台東区在住。
大学卒業後の約20年間、防犯カメラや万引防止システムのセールス活動に携わる。トップセールスや社長賞など多数の受賞経歴。中間管理職として組織のマネジメントを携わった際に、ストレスによる怒りでパワハラに及ぶなど、怒りで多くの失敗を重ねた経験を持つ。
自身の心の体質改善を目指し「アンガーマネジメント」を取り組んだことが人生の転機。2020年9月に独立し「office TIDA」を開業。「心を整える」をテーマとした研修やコンサルティングで、アンガーマネジメントの普及に取り組んでいる。怒りで失敗した体験談を踏まえた講座・研修には定評があり、年間受講者数延べ約500人以上。 一般向けの講座、および企業・団体向け講演を年間120回開催している。
日本アンガーマネジメント協会監修書籍「アンガーマネジメントトレーニングブック2023年版」(ミネルヴァ書房)プロジェクトメンバーに参加。執筆活動も行なっている。
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