なぜ「怒り」を抑えられないのか 明石市長を暴走させた「イライラの正体」とは:“沼る”ビジネスパーソンの共通点(2/3 ページ)
暴言の責任を取り、政治家引退を表明した兵庫県明石市の泉房穂市長。実績を評価する声があがる一方で、近年はハラスメントに厳しい視線が向けられ、企業にもパワハラ防止措置が義務付けられる時代。人はなぜ怒りを抑えることができないのか。
――泉氏の手腕を評価する声もあります。実績と暴言問題の落差をどう見るべきでしょうか
川田: まず、仕事面で評価する声は本当に多いです。一方で、いま世の中ではパワハラに対する忌避意識が高まっています。その行動ひとつを取っただけで信用問題につながり、プロジェクトが頓挫することもあります。ここは実績が伴えども、致し方ないと感じます。
ただ、人は他人と過去は変えられませんが、自分自身と未来は変えられます。ですから、今までの実績もありますので、感情のコントロールさえ徹底できれば、再び市民の理解や支持を得られるということもあるのではないでしょうか。
理性が介入する「6秒ルール」
――それではアンガーマネジメントの基本的な考え方について教えてください
川田: アンガーマネジメントは怒らなくなることではありません。怒っていいのです。実際に怒りっぽい人が取りがちな行動は、怒りで反射的に言葉を発したり、メールを返したりすることで、さらに怒りをヒートアップさせてしまうことです。アンガーマネジメントは、いま感じた怒りについて、本当に怒るべきことなのか、怒る必要のないことなのか、その線引きをうまく行えるようになるトレーニングです。「6秒ルール」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
――「6秒ルール」ですか
川田: 怒りを感じたら、6秒間やり過ごすことが大切です。やってはいけないのが反射的に言い返したり、行動に移したりすることです。反射的な行動をしてしまうと「なんであんな酷いことを言ってしまったんだろう」と、あとで後悔することになります。
6秒経ったところで怒りが収まるわけではありません。しかし、心理学上では、6秒経つと頭の中に理性が介入してくると言われています。理性が介入するからこそ、冷静な判断を行うことで、あとで後悔することが少なくなるということです。
SNSやインターネットニュースのコメント欄を見ていると、怒りに任せて反射的に打ち込んでいる人が多く見られます。自分の価値観とは違う意見に対し、反射的な行動を取ってしまうのでしょう。
――SNSなどインターネットでは自身の価値観とは相容れない意見や情報など、思わず反射的な怒りにつながる要素が多くありますね
川田: その通りです。例えば、私の「〜べき」は私の中で100点満点。ですが、それが万人の100点満点とは限らないということです。自分のあたりまえではないことはたくさんある。そういう考えもあるんだなと、自分の価値観を少し和らげてあげると、イライラすることも減ってくるのではないでしょうか。
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