なぜ「怒り」を抑えられないのか 明石市長を暴走させた「イライラの正体」とは:“沼る”ビジネスパーソンの共通点(1/3 ページ)
暴言の責任を取り、政治家引退を表明した兵庫県明石市の泉房穂市長。実績を評価する声があがる一方で、近年はハラスメントに厳しい視線が向けられ、企業にもパワハラ防止措置が義務付けられる時代。人はなぜ怒りを抑えることができないのか。
“沼る”ビジネスパーソンの共通点
「沼に足を取られたように、なかなかスランプから抜け出せない」「考えすぎてつらい……」。そんな時、どのように対応すべきなのだろうか。仕事上で起きがちな事例を基に、“沼”から抜けだすヒントを考えてみたい。
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暴言の責任を取り、政治家引退を表明した兵庫県明石市の泉房穂市長。子育て支援に注力し、18歳までの医療費や第2子以降の保育料の完全無料化を果たすなど、その実績を評価する市民も多く、引退を惜しむ声が相次ぐ。
一方で、近年はハラスメントに厳しい視線が向けられ、企業にもパワハラ防止措置が義務付けられる時代。実績を伴っても舌禍が繰り返されれば、退場もやむを得ない。怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」を学んでいたという泉氏が、怒りを抑えることができなかったのはなぜか。
日本アンガーマネジメント協会の認定講師であり、アンガーマネジメントコンサルタントの川田裕輔さんによると、怒り自体は誰もが抱く自然な感情で、ストレスや不安など、マイナスの感情が導火線となり、“爆発”に結び付くという。怒りの感情とうまく付き合うコツを、川田さんに聞いた。前編・後編の2回に渡って紹介する。
明石市長の怒りを暴走させた正体とは
――怒りを爆発させてしまった泉・明石市長をどう見ていますか
川田: まず、泉市長はとても責任感が強い方なのではないかと感じました。実際に、明石市は住みやすく子育て施策も充実されているのは泉市長のSNSやニュースで拝見していたので、政治家として有能な方だと感じていました。
一方で、責任感が強く、目標レベルが高いからこそ、それにそぐわない価値観を持っている人や、仕事内容が泉市長の考えるレベルに達しない人に対して、怒りを制御できなかったのかなと感じます。
――責任感の強さが暴言につながったということですか
川田: 怒りは誰もが抱える感情ですが、実際に怒りを感じるのは、自分の考える「〜べき」「当然」「普通」「あたりまえ」という価値観が裏切られたときです。
そして、何が怒りの感情を燃え上がらせるかというと、当人が抱えているストレスや不安、寝不足や仕事に追われるといったマイナス感情やマイナスの状態です。こうした要因が当人の「〜べき」という考えに引火し、大きな炎となって怒りを爆発させます。泉市長も責任感が強いからこそストレスを感じていて、それが怒りに引火し暴言につながったのではないかと考えます。
――泉氏の投稿からは「積もりに積もった怒りが爆発してしまった」「理不尽な自民党と公明党に完全に切れてしまいました」などと感情を抑えきれない様子が浮かびます
川田: 泉市長もアンガーマネジメントを学び、本を読んでいたと話していましたが、実際に本を読むだけでは実践できません。アンガーマネジメントは、筋トレやダイエットに似ています。怒らないようにするためのトレーニングではなく、怒りを感じたときに上手に怒れるようになるためのトレーニングです。
「上手に怒る」ための大原則は、「人にあたらない」「自分にあたらない」「物にあたらない」の3つです。それを踏まえた上で、自分の考えを適切に相手に伝えられるようになることです。相手に暴言を吐いたり、机を叩いたりするのはNGです。泉市長のようにSNSに怒りをぶつけることも、もちろんNGです。
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