70年の悲願、「新金線旅客化計画」の現在:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
東京都で新線計画が進んでいる。22年だけでも東京メトロや多摩都市モノレールなどの延伸で、事業許可や計画策定がされた。そして東京都にまだある沿線の悲願の1つが葛飾区の「新金線旅客化計画」だ。新金線は貨物専用線で、沿線住民は貨物走行のない時間帯に旅客列車の運行を望んでいる。
当時とは前提条件が変わったところもある。貨物列車は04年(平成16年)当時の1日12往復から4.5往復になった。新宿踏切で交差する国道6号線は1983年度(昭和58年)に6車線拡幅と新宿立体交差化が事業化され、1987年(昭和62年)に用地獲得が始まった。まだ完成時期の見通しは立たないけれども、この新宿立体事業では、新金線の高架化が含まれている。
ただし、この前提でも不確定要素が多く、上下分離を前提とした運行会社の単年度収支は7駅案で約2.7億円の黒字または2.9億円の赤字、10駅案は約3.2億円の黒字または2.4億円の赤字となった。プラスマイナスの振り幅が大きく、まるで賭け事のような結果といえる。
20年は新宿踏切に関する調査が行なわれた。21年は貨物列車とLRT列車の共存方法の課題整理と、上下分離の事業の枠組み、新小岩〜新宿踏切手前を先行開業とする段階整備、中間の高砂駅(仮称)と京成高砂駅の乗り換え動線(仮)の検討結果が示された。
また、既存の鉄道に寄らず、モノレールや新交通システムで地域の交通を整備する方法が検討された。しかし、費用が大きくなる上に、新金線の直上にJR東日本が設置した高圧電線があるため、今回の調査検討だけで終った。
22年は上下一体、または上下分離後の枠組みが1案ずつに絞られ、段階整備における7駅案と10駅案の需要予測、新小岩駅の位置を自転車置き場付近とした場合の線路配置、ダイヤの検討が行なわれた。単線整備ながら、貨物列車の遅延などに対応するため、7駅案のすべてに行き違い設備を設ける。また、新宿踏切付近の平面交差に制約が多いため、立体交差案も検討した。
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