70年の悲願、「新金線旅客化計画」の現在:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
東京都で新線計画が進んでいる。22年だけでも東京メトロや多摩都市モノレールなどの延伸で、事業許可や計画策定がされた。そして東京都にまだある沿線の悲願の1つが葛飾区の「新金線旅客化計画」だ。新金線は貨物専用線で、沿線住民は貨物走行のない時間帯に旅客列車の運行を望んでいる。
「新金線いいね!区民の会」の独自試算は、初年度から単年度黒字
葛飾区の調査は19年に概算事業費の幅を示した後、問題点の解決方法の検討に進んだ。後の調査結果で概算事業費は変化するはずだけれども、葛飾区がまだ公表していないため、19年の「最悪で2.9億円の赤字」のまま報道されている。
しかし、前出の住民ボランティア団体「新金線いいね!区民の会」のメンバーらが得意分野の知恵を出し合い、独自に試算したところ、新小岩〜新宿間までの段階的整備で「開業初年度から単年度黒字」「累計利益は初年度のみ9000万円の赤字、以降は黒字」「全通時年度は赤字だが累計利益で補える」という結果になった。
宇都宮ライトレールのデータを参考とし、24年に開業前経費を計上。30年に新小岩〜新宿間の部分開業、35年に全線開業、50年には累積黒字が32億6500万円になり、車両の更新も可能になる。また、部分開業と同時に高砂踏切北側から常磐線手前までの高架工事を開始し、34年までに複線工事完了とする。その結果として速度向上、運行本数増加による輸送力増強で収益の向上も期待できる。
ちなみに高架工事は葛飾区の案より短く、高砂踏切以南は高架としない。そうしないと京成線の高架をくぐれないからとのこと。また、新小岩駅の位置や7駅案の精査、最新の信号システムを使った行き違い設備の削減などでコストを下げられるという。葛飾区の調査結果の深度化に、「新金線いいね!区民の会」の知恵が加われば、さらに良い案になるだろう。
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