社内の“違法なヒミツ”を知ってしまったら──内部通報者を守る「公益通報者保護法」、改正でどう変わった?:2022年6月施行(2/6 ページ)
自分の会社で違法なことが行なわれている。もしあなたがそうした事実を知ったとき、どうするでしょうか。違法行為は通報すべきですが、それが原因で自分が解雇されるかも……と考えると通報を躊躇(ちゅうちょ)するかもしれません。そんなときに内部通報者を守るのが「公益通報者保護法」です。
改正法では保護される通報者の範囲が広がった
次に、22年6月に施行された改正法の内容を見ていきましょう。
まず変わったのは、保護される通報者の範囲です。改正前の公益通報者保護法は、保護される通報者の範囲を「労働者」だけに限定していました。しかし、企業に勤めている間(労働者である間)は恐くて内部通報できなかったものの、退職後は通報できるという人も多いと考えられます。
また、「労働者」ではない、取締役などの役員の中にも、保護されるのであれば内部通報しようと考える人がいるかもしれません。
このような社会的要請を踏まえ、改正法では「労働者であった者」として、退職後1年以内の者も保護される「通報者」に含めることになりました。
また、役員についても、企業内部で調査是正措置を行ったのであれば、保護対象に含めることになりました。役員には、自ら企業内部において権限を駆使して問題を是正する義務が課されています。そのため、労働者の場合と異なり、役員については「企業内部で調査是正措置を行った」ことが要求されているのです。
もし、あなたの会社に内部通報規定があるのでしたら、上記の通り改正法で保護される通報者の範囲が拡大したことを踏まえて、通報できる者の範囲を拡大しておいてもよいでしょう。
次に、改正法では保護される対象などの範囲が広がりました。改正前の公益通報者保護法は、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律を対象としていました。つまり、刑事罰を受ける可能性のある犯罪事実が、内部通報により保護される対象とされていたのです。このような、公益通報者保護法により保護される通報を公益通報といいます。
しかし、刑事罰の対象とならない行為であっても、内部通報により多大な影響を与えることも考えられます。そこで、改正法では、「過料の理由とされている事実」、つまり軽微な行政罰の規制違反行為についても保護される対象にしました。
その他、改正法では、行政機関に対する公益通報の要件や、企業外部に対する公益通報の要件も緩和しており、これらの公益通報のハードルが下がることになりました。
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