結局、会社にしがみつくしかないのか?──見捨てられた40代を襲う“キャリアの危機”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)
大手企業に勤める45歳の男性は、転職にも出世にも希望を持てず「可能性がなくなるのは、結構しんどい」と吐露する。氷河期に就職し、長時間労働や昭和を引きずる上司に耐え、ゆとり世代の面倒を見て……。「俺たちの時代」と思える時期がなかったミドル世代は、今後のキャリアとどのように向き合うべきなのだろうか?
世の中で最も怖いことの一つが、自分を知ること。自分の「市場価値」もその一つです。
某大手企業に勤める45歳の男性会社員は、次のように話します。
長いこと1つの組織でずっと過ごしていると、だんだんと自分の市場価値みたいなものが分かってくるじゃないですか。まぁ、40歳になった頃からなんとなく感じていたんですけど、その時はかすかな光みたいなものが見えた。
でもね、さすがに45歳を過ぎるとそれが全く見えなくなった。どういうわけか自分に自信が持てないことが多くなってしまったのです。
明らかに会社は、もっと若い世代に期待してるし、役職的に見ても自分の活躍の場は限られています。40代の転職市場はにぎわっているなんて言われてますけど、現実はそんなに甘くない。20〜30代は簡単に転職してます。結構、いい会社に採用されて、うちの給料よりも高い。でも、40代って、かなりハードル高いですよ。よほどスキルのある人だったら、話は別なんでしょうけど、僕のようにただのホワイトカラーでは、つぶしは効きません。
海外勤務の経験もないし、これといった大きなプロジェクトを成功させた経験もない。履歴書に書くことがないんです。こんな40代を、わざわざ雇おうなんて会社ありません。これが自分の市場価値なんだと思うと……情けないです。
可能性がなくなるっていうのは、結構しんどいですね。気が付くと会社にしがみついている自分がいてね。数年前にはそういう上司たちを見て、格好悪いと思っていたのに。……なんか俺、格好悪いなぁって。
「俺たちの時代はついに来なかった」 40代の現状は
いつの時代も40代は、自分の市場価値らしきものをつきつけられるお年頃でした。
しかし、「今」を生きる40代は、今までとはちょっと違います。
なにせ、会社の「若いもの嗜好」は年々高まりをみせ、つい数年前までは、ミレニアル世代がチヤホヤされていたのに、今では“Z世代信仰”真っ盛りです。
デジタルネイティブで、社会貢献意識が高く、いとも簡単に海の向こうとつながる。そんなZ世代の「育て方・扱い方・コミュニケーションの取り方」なるものが飛び交い、「若い人の意見を聞こう!」を合言葉に、40代はおろか30代もスルー。そこに40代後半に差し掛かる一介の会社員に食い込む余地はありません。
おまけに会社でも社外でも、DX、メタバースという横文字が飛び交い、「有能な人材が不足している」「年齢に関係なく、有能な人材を高賃金で採用する」「有能な人材の獲得方法」などなど、あちこちで「有能」という、えらく甘美な2文字が使われるあり様です。
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