結局、会社にしがみつくしかないのか?──見捨てられた40代を襲う“キャリアの危機”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
大手企業に勤める45歳の男性は、転職にも出世にも希望を持てず「可能性がなくなるのは、結構しんどい」と吐露する。氷河期に就職し、長時間労働や昭和を引きずる上司に耐え、ゆとり世代の面倒を見て……。「俺たちの時代」と思える時期がなかったミドル世代は、今後のキャリアとどのように向き合うべきなのだろうか?
コロナ禍でデジタル改革が一気に進み、多くの50代が「俺たちの時代は終わった」とやるせなさに襲われました。
一方、40代は「俺たちの時代はついにこなかった」。
いわゆる“就職氷河期世代”の彼らは、バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代前半に就職活動をし、たまたま就職時の時代が悪かっただけで、入りたい会社にも入れず、運良く入れても「正社員」という手形を失わないために、長時間労働に耐え、昭和の悪習を引きずる上司のパワハラに耐えた。やっと下が入ってきたと思えば、「え? それ、業務命令っすか?」と仕事への価値観が全く異なる“ゆとり世代”に翻弄され……。
「俺たちの時代」なんて時代はないままに、賞味期限切れをむかえそう。
そうです。まるで泥沼に入り込んだように「不遇」につきまとわれた世代なのです。
「可能性がなくなるっていうのは、結構しんどい」──。件の男性のこの一言には、さまざまな問題や複雑な感情が入り乱れている。それだけに、自分の「市場価値」を突きつけられることがやるせなく、情けなく、まるで金縛りにあったように身動きできなくなってしまったのでしょう。
しかし、どんなに時代が変わっても、「人の心の動き」は変わらないのも事実です。外からは決して見えない「本質的な心」は、最も変わりにくい部分です。
ミドル世代が陥る「危機」の正体
「上昇停止症候群」──これは精神科医の小此木啓吾氏が、1980年代に『モラトリアム人間を考える』(中公文庫)という本の中で使った言葉です。
上昇停止症候群は、“上”を目指すことをモチベーションにしてきたミドル世代のビジネスパーソンが、ライバルや後輩に先を越され、自分の昇進の可能性がなくなった時に陥る症状のことです。
それまで前向きだった人が無気力になったり、自分でも説明できない喪失感が強まったり、何をやるにも自信をなくしたりと、一見うつ傾向に似た症状に襲われるのです。
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