2015年7月27日以前の記事
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結局、会社にしがみつくしかないのか?──見捨てられた40代を襲う“キャリアの危機”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

大手企業に勤める45歳の男性は、転職にも出世にも希望を持てず「可能性がなくなるのは、結構しんどい」と吐露する。氷河期に就職し、長時間労働や昭和を引きずる上司に耐え、ゆとり世代の面倒を見て……。「俺たちの時代」と思える時期がなかったミドル世代は、今後のキャリアとどのように向き合うべきなのだろうか?

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 キャリア理論では、この時期を「中期キャリアの危機」と呼び、早い人は30代中盤に、遅い人でも50歳前後までには、誰もが通過する儀式とされてきました。

「自分の市場価値はいかほどなのか?」
「この会社は自分にふさわしいのだろうか?」
「この仕事が自分の仕事の全てなのだろうか?」

 ──など、とめどもない不安に埋め尽くされる。


市場価値などに悩む「中期キャリアの危機」(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 とりわけ、いわゆるエリートで、勤務先が大企業であればあるほど、社会的地位が高ければ高いほど、稼ぎが多ければ多いほど、「安泰」という2文字を無意識に求める思考が骨の髄まで染み込んでいるので、息苦しい。将来が不安だというあいまい性は、自分が認識する以上に不快です。

 このタイミングでしっかり自分を見つめ直し、新たなスタートを切れれば、人生後半戦の職業人生を充実させられる可能性が格段に高まります。しかし、これがかなり難しい。

 具体的に動くことでしか、危機には対処できません。息をひそめ死んだふりをしたり、何をやっても無駄、と主体的に動かないでいたりすると、たちまち「キャリア・プラトー」(キャリア発達の高原状態)と呼ばれるに伸びしろのない停滞期に陥り、つまらない人生を余儀なくされます。

ミドル世代に必要な「新たなスタート」とは?

 ただ、勘違いしないでほしいのは、「新たなスタート=転職」とは限らないってこと。

 もちろん新天地でスタートできれば理想的かもしれません。新たな環境の下、日常を共に過ごす人が変わるのは刺激的ですし、これまで自分が気付かなかった「自分」に出会え、自分が知らないことがたくさんあると痛感することで、「成長している感」を味わえます。それは自分の可能性を信じる心につながり、「まだまだいける。もっと頑張れる!」と前に進むエネルギーが充電されます。

 しかし、一方で転職をしないで、今の会社で目の前の仕事に決して手を抜かず、「会社のため」ではなく、「自分のため」に会社組織をうまく使う方法もあります。転職よりむしろこちらの方が効果的なケースもあります。

 なんやかんやいっても、今までの蓄積された経験が暗黙知として身体の奥底に刻まれていますし、会社という組織にはさまざまな武器=リソースがある。名刺を出す、会社の名前を言うだけで、「会ってくれる人」はいます。転職の履歴書にかくほどでなくても、やってきた経験・培った技術を後進に移転することも、成長につながる武器になる。

 その上で、「会社の仕事」だけではなく、「私の人生の仕事」に精を出すと、回り回って「会社でのスキルアップ」につながるのです。

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