結局、会社にしがみつくしかないのか?──見捨てられた40代を襲う“キャリアの危機”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
大手企業に勤める45歳の男性は、転職にも出世にも希望を持てず「可能性がなくなるのは、結構しんどい」と吐露する。氷河期に就職し、長時間労働や昭和を引きずる上司に耐え、ゆとり世代の面倒を見て……。「俺たちの時代」と思える時期がなかったミドル世代は、今後のキャリアとどのように向き合うべきなのだろうか?
キャリア理論では、この時期を「中期キャリアの危機」と呼び、早い人は30代中盤に、遅い人でも50歳前後までには、誰もが通過する儀式とされてきました。
「自分の市場価値はいかほどなのか?」
「この会社は自分にふさわしいのだろうか?」
「この仕事が自分の仕事の全てなのだろうか?」
──など、とめどもない不安に埋め尽くされる。
とりわけ、いわゆるエリートで、勤務先が大企業であればあるほど、社会的地位が高ければ高いほど、稼ぎが多ければ多いほど、「安泰」という2文字を無意識に求める思考が骨の髄まで染み込んでいるので、息苦しい。将来が不安だというあいまい性は、自分が認識する以上に不快です。
このタイミングでしっかり自分を見つめ直し、新たなスタートを切れれば、人生後半戦の職業人生を充実させられる可能性が格段に高まります。しかし、これがかなり難しい。
具体的に動くことでしか、危機には対処できません。息をひそめ死んだふりをしたり、何をやっても無駄、と主体的に動かないでいたりすると、たちまち「キャリア・プラトー」(キャリア発達の高原状態)と呼ばれるに伸びしろのない停滞期に陥り、つまらない人生を余儀なくされます。
ミドル世代に必要な「新たなスタート」とは?
ただ、勘違いしないでほしいのは、「新たなスタート=転職」とは限らないってこと。
もちろん新天地でスタートできれば理想的かもしれません。新たな環境の下、日常を共に過ごす人が変わるのは刺激的ですし、これまで自分が気付かなかった「自分」に出会え、自分が知らないことがたくさんあると痛感することで、「成長している感」を味わえます。それは自分の可能性を信じる心につながり、「まだまだいける。もっと頑張れる!」と前に進むエネルギーが充電されます。
しかし、一方で転職をしないで、今の会社で目の前の仕事に決して手を抜かず、「会社のため」ではなく、「自分のため」に会社組織をうまく使う方法もあります。転職よりむしろこちらの方が効果的なケースもあります。
なんやかんやいっても、今までの蓄積された経験が暗黙知として身体の奥底に刻まれていますし、会社という組織にはさまざまな武器=リソースがある。名刺を出す、会社の名前を言うだけで、「会ってくれる人」はいます。転職の履歴書にかくほどでなくても、やってきた経験・培った技術を後進に移転することも、成長につながる武器になる。
その上で、「会社の仕事」だけではなく、「私の人生の仕事」に精を出すと、回り回って「会社でのスキルアップ」につながるのです。
関連記事
- 「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 「新人が育ってくれない」と悩む上司が知らない、Z世代の特徴とは
新しい価値観を持つ「Z世代」が新入社員として働き始めている。仕事への向き合い方をめぐって摩擦が起きる現場も少なくない。Z世代は何を考えているのか、それに対し、上司などの旧世代の社員はどのように対応すべきなのか。 - 「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。 - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.