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結局、会社にしがみつくしかないのか?──見捨てられた40代を襲う“キャリアの危機”河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

大手企業に勤める45歳の男性は、転職にも出世にも希望を持てず「可能性がなくなるのは、結構しんどい」と吐露する。氷河期に就職し、長時間労働や昭和を引きずる上司に耐え、ゆとり世代の面倒を見て……。「俺たちの時代」と思える時期がなかったミドル世代は、今後のキャリアとどのように向き合うべきなのだろうか?

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「自分にはできる」 ポジティブな循環を生むためには

 では、「私の人生の仕事」とは何か?

 そのヒントをくれたのが、米国の組織心理学者のローラ・ナッシュです。

 ナッシュらは、「自分らしい生き方を手に入れるコツ」を探ろうと、100人近い、世間からは「成功者」と呼ばれている人たちにインタビューと、観察実験を行いました。

 その結果、「人と競争したり、世間の価値観に合わせようとしていたのでは、自分らしい成功をつかむことはできない」とし、「幸福感・達成感・存在意義・育成」の4つの要素をバランスよく得られる“人生の友”に、関わり続けるプロセスの重要性を説きました。

  • 幸福感:人生から喜びと満足感を得ること
  • 達成感:何らかの業績で抜きん出るなど、自らの成長を実感できること
  • 存在意義:「私は意味のある存在である」と感じられる役目を得ること
  • 育成:自分の強みや技能を他者に受け継ぎ、その人の成功を助けること

「幸福感・達成感・存在意義・育成」の4つの要素をバランスよく得られるものに関わり続けること(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 例えば、マラソンをしている時間に至福の幸せ、すなわち幸福感を感じるとしましょう。

 それを毎日続ければタイムが縮まったり、長い距離を走れたりするようになって、達成感を覚えることでしょう。さらに、マラソン大会やチャリティーマラソンに出たり、マラソンで新しい人とつながったりすれば、存在意義を感じることができます。そして、他者に走り方を教えたり、子どもと一緒に走ったりするというように、育成のプロセスを経ると満足感は高まっていく、といった具合です。

 そういった「私の人生の仕事=自分らしい世界」を持てた人は、会社でも自分らしく納得できるプロセスを築ける可能性が極めて高い。マラソンなんて小さな出来事のように思われるかもしれないけれど、確固たる価値観と「自分にはできる」という自信が仕事の場面でも生かされ、ポジティブな循環を生み出すのです。

 そもそも人は「仕事」「家庭」「健康」の3つの幸せのボールをもっていて、これをジャグリングのように回せる働き方をすれば、人生は豊かになります。働くという、一見しんどい作業が、豊かな人生を手に入れる最良の手段になる。

 そして、もし「やっぱり転職しよう!」と気持ちが高まったら、その時に一歩踏み出せばいい。決して遅くはありません。

 あるいは「このまま会社に残ろう!」と決めてもいい! 会社に残る=しがみつくと同義ではないのですから。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。


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