iDeCoも“増税”か 老後資金に迫る魔の手 「退職所得控除の縮小」がもたらす影響:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)
政府税調が打ち出した「退職所得控除の縮小」が大きな話題となっている。実現すれば、iDeCoの実質的な“増税”にもつながるなど、老後資金の形成に大きな影響を与えそうだ。
(1)で示した通り、iDeCoの掛け金がその年の所得から差し引かれることに魅力を感じる人は多いかもしれない。しかし、結局は(3)で挙げたように、受け取り時に所得として加算されるため(1)で控除された所得にかかる税金は(3)に繰り延べられているにすぎない。そう考えると、iDeCoにおける非課税とは(2)の運用益のみということとなるため、完全な非課税制度とはいえないのだ。
そう考えると、現役時代の働きに対して退職時にまとめて支払われる「退職金」も、iDeCoと似た制度といえるだろう。退職金は現役時代の働きによって蓄積され、退職時に所得として加算されるものである。退職金が得られるタイミングは退職時の一点のみで、そこに所得が集中する形となる。しかし、実際は毎月の労働の積み上げでなされたものであるため、退職時だけに注目して高い税率をかけるのは不合理だ。
その結果、考案されたのが「退職所得控除」という制度である。具体的には、勤続年数が20年以下とそれよりも長い期間で控除される金額が異なってくる。
例えば、一般的なケースで勤続年数30年とした場合に、退職金2000万円をまとめて受け取った際にかかる税金はどれくらいになるだろうか。
この場合、退職所得控除は勤続年数20年以下の部分が「40万円」であるため、この部分の控除額が「40×20=800万円」となる。そして、勤続年数21年以降の部分は控除額が1年当たり70万円に積み増されるため、「70万円×10年=700万円」となる。従って、退職所得控除額は1500万円と算出される。
受け取った退職金は2000万円であるため、ここから退職所得控除額を差し引いた500万円が退職所得になる――わけではない。ここからさらに0.5を乗じた250万円が退職所得となる。250万円の退職所得にかかる税額は大きくなく、所得税が15万5000円程度、住民税も25万円程度と、合計40万5000円ほどの税金しかかからない。今回のケースでは手取り額はおよそ1960万円となり、2000万円の退職金における額面のほとんどが手元に残るのである。
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