iDeCoも“増税”か 老後資金に迫る魔の手 「退職所得控除の縮小」がもたらす影響:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)
政府税調が打ち出した「退職所得控除の縮小」が大きな話題となっている。実現すれば、iDeCoの実質的な“増税”にもつながるなど、老後資金の形成に大きな影響を与えそうだ。
さて、話を戻そう。iDeCoは「個人型確定拠出年金」といわれており、年金の代わりといわれることも多い。しかし、iDeCoを一時金で受け取った場合は、先ほど説明したように退職所得として処理されることや、年金での受け取りも可能なことを踏まえると、「退職金の代わり」といった側面が強い。さらに、iDeCoには掛け金の上限もあるため、多くの人は退職所得扱いとなる一時金の受け取りを前提として加入している。つまり、退職所得控除の見直しは、多くのiDeCo利用者にとってマイナスになるということだ。
退職所得を巡っては、22年1月から、勤続年数5年以下の従業員に対して最後に0.5を乗じて退職所得を算出する処理を廃止したばかりだ。このような情勢や、このたびの「人材の流動性を高める」という趣旨を踏まえると、退職金税制ひいてはiDeCo税制は以前より有利になる可能性は相当低いだろう。iDeCoは60歳まで原則として解約できないことを踏まえると、加入がある程度進んだ段階で制度を改悪することは“詐欺”的であると非難されても仕方がないようにも思える。
「ゴール直前」で暴落のリスクも
先ほども触れたように、iDeCoの最大のデメリットは60歳まで原則として解約できないことにある。つまり、iDeCoは数十年単位の運用となる。そのような長い期間にわたって全て平静な人生を歩めれば問題ないが、加入時には予測できなかった出費はつきものだ。確かに拠出額を減らしたり、拠出を停止したりはできるが、iDeCoは原則として引き出せないことから「貯金を切り崩す」レベルの事態に見舞われた場合は毎月の拠出減だけで賄えない可能性がある。
また、iDeCoは景気見通しが悪化するという理由では途中解約ができない。極端な話、加入者が59歳から60歳のときに大規模な相場の下落があった場合は、相場の流れをうまく読んでスイッチングすることができない限り、自身の積み上げてきた資産が減るのを指をくわえて眺めるしかない。そのようなリスクがあることから、iDeCoにおいては拠出金の約半分が定期預金や保険といったインフレに弱い、元本確保型の金融商品に充てられているとというデータもある。これでは、運用益の非課税という恩恵を最大限得られない。また、拠出時の所得控除も、結局は出口で課税されることから、退職所得控除が削られていけば元本確保型の金融商品をiDeCoで運用するメリットはますます小さくなっていく。
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