債務超過で「突然の経営危機」──GMO安田CFOが、乗り越えられた理由:対談企画「CFOの意思」(3/5 ページ)
「CFOの意思」第6回の対談相手は、前編に引き続きGMOインターネットグループ副社長兼CFOの安田昌史氏。過払い金問題で「280億円で買った会社を、500万円で売る」危機に陥っても、会社を成長させられたのはなぜか? 撤退覚悟の状況で繰り出した「ウルトラC」の技とは?
過払い金問題による危機──280億円で買った会社を、500万円で売る
安田: しかし、06年にはさまざまな事件が起こりました。ライブドア事件に始まり、僕らにとって大きな出来事として、過払い金問題が起きました。やっと東証1部上場したのに、その2年後に継続企業の疑義がつくというアップダウンを経験したのです。
嶺井: 突然の経営危機ですよね。内部で起きていたことを簡単に聞かせていただけますか。
安田: 05年のタイミングで、証券とローン事業で金融事業に参入していました。証券はスクラッチで作りました。今のGMOクリック証券ですね。
ローン事業は、当時のオリエント信販を280億でM&Aしました。そしてその1年後に、いわゆる過払い金の問題が発生したというのが大まかな流れです。
嶺井: 訴訟で、過払い金の請求ができるという判決が当時出ましたね。(※1)
(※1)旧貸金業法において、所定の要件を満たす場合には貸金業者が本来無効となるはずである利息制限法所定の制限超過利息を受領したとしても、有効な弁済があったものとみなされていたが、これが原則違法とされた。(参考:最高裁判所第二小法廷平成18年1月13日判決とは?/債務整理・過払い金ネット相談室)
安田: その過払金の請求についての最高裁の判決が出たことにより、過去10年分の過払い引当金を計上しなければいけなくなりました。そのため、キャッシュフローは回っていても、たちまち巨額の損失を計上することになり、債務超過寸前になってしまった。この過払い問題は、底が見えない状態だったので、280億円で買った会社を、やむを得ず当時の経営陣に500万円で売却することにしたんです。当時のIR資料(07年中間決算書)を見ると本当に……しびれますよ。
嶺井: しびれますね。
安田: ローン、クレジットから完全撤退したのが、この決算書から見て取れますよね。それから、最も見た目で分かりやすいのがバランスシートの変化。07年3月末の自己資本116億円が同6月末で6億円ですよ。自己資本比率8%から0.5%まで一気に低下しました。
嶺井: たった3カ月で、この状態になったんですよね。
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