北総鉄道が値下げしても、スカイライナーは“そのまま”のワケ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)
身近な商品の値上げが続くなか、北総鉄道の運賃値下げが予定通り実施された。北総鉄道は「日本一運賃が高い鉄道」という不名誉で知られる。もし北総鉄道の名前は知らなくても、スカイライナーに乗った人は必ず通っている。しかし今回の値下げで、スカイライナーは値下げにならない。なぜだろうか。
北総鉄道は一般旅客向けの運賃を下げたけれども、京成電鉄が支払う線路使用料は下げなかった。だからスカイライナーの運賃は変化なしだ。値下げしてくれたらいいけど、これ以上下げられないほど安いらしい。本来、北総は京成電鉄から得る線路使用料を値上げして、一般客向けの運賃をもっと下げるべきだ。これは「北実会」の考え方に近い。提訴のきっかけも、成田スカイアクセスが開業し、北総線の線路使用料収入が増えたにもかかわらず、たった5%しか値下げされなかったからだ。
北総線は値下げされたけれども、まだ京成電鉄の2倍の水準だ。通勤客がすべて戻らず、運行コストが増えるなかで、さらなる値下げが実現するか。それには北総鉄道の収益アップが必須だ。京成電鉄の第2種鉄道事業をとりやめ、初乗り運賃と正規運賃をいただくしかない。しかし、北総鉄道の株の過半数は京成電鉄が持っている。首根っこをつかまれている。
さらにややこしいことに、北総線の小室〜印旛日本医大間は、実は北総鉄道が第2種鉄道事業者で、線路施設を持つ第3種鉄道事業者の千葉ニュータウン鉄道に線路使用料を払っている。この千葉ニュータウン鉄道は京成電鉄の100%子会社だ。別会社とはいえ、お金がぐるっと回って京成電鉄に戻っているように見える。
これで各事業者がうまく回っているというなら、部外者がとやかくいう筋ではないけれど、釈然としない。北総鉄道は会社設立から今年で50周年。半世紀も続いた古い枠組みは、そろそろ変えたほうがいい。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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