「年下上司にバカにされ、手柄を奪われた」 45歳男性を追い詰めたものの正体:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
年下社員が上司になり、複雑な思いを抱える45歳の男性。ある事件をきっかけに、それまで押さえ込んでいたネガティブな感情が限界を超え「自分でも信じられないような行動を取ってしまった」といいます。男性を追い込んだものの正体とは──?
加害者を生まない、オトナな組織
つまり、パワハラの加害者にならないためには、いかなる場合でも感情をコントロールできる高いスキルが必要となる。そう。完璧なオトナになるしかないのです。
いかなる激情にも惑わされない知性と、事態を冷静に把握し、熟慮し、思慮分別を行える純度100%のオトナになれれば、パワハラの加害者になる心配はなくなるはずです。
ただ、私たちがオトナになるには、会社にもオトナになってもらわなくては困ります。
オトナの会社とは、
- 能力が発揮できる機会のある
- 正当に評価してもらえる
- 遂行不能である過剰な仕事を要求しない
- 自由に発言できる
- 困った時に相談できる上司や同僚がいる
──といった、誰もが「人」としての尊厳を持ち、やりがいを感じながら働ける、元気な組織です。
「おいおい、こっちの方が私たちがオトナになるよりか、難しいでしょう?」と思う人が多いでしょう。確かにそうかもしれません。
しかし、“半径3メートル世界”ならどうでしょうか。
会社が“オトナの会社”になるには、トップの「そうしたい」という熱い思いと、鶴の一声が必要です。一方、私たちを取り巻く半径3メートルの世界=チームなら、上司がその気になれば実現可能です。
マネジメントとは、ただ人を管理することではない。身の回りにいるメンバー、つまり半径3メートル世界の仕事の仲間たちのパフォーマンスが最高に引き出される環境を整える(=マネージする)ことなのです。
人は、つい“上”に立つと、結果を出すことばかりに躍起になります。
しかし、大切なのはそこにいるメンバーと共に戦うこと。全ての人に対し「私と同じ立派な会社員」として接し、おのおのが「立派な会社員」として仕事できる環境を作ることです。
今、多くの会社では旧来の年功序列が崩れてきています。その代わりに多様性の尊重を掲げるのであれば、同時に「お互いを尊重する」という当たり前を実現できる組織を作り上げてほしいです。
今後はますます「年下上司」が増えることは必然なのですから。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。
“スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。
月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相
求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、「求人詐欺」が後を絶たない。洋菓子店マダムシンコの運営会社の元従業員は「月給35万円との約束で入社したが、実際は月給17万円だった」として労働審判の申し立てをしている。求職者を守る法律や求人メディアの掲載基準もあるにもかかわらず、なぜ求人詐欺はなくならないのか? ブラック企業アナリストの新田龍氏が実態に迫る。
「新人が育ってくれない」と悩む上司が知らない、Z世代の特徴とは
新しい価値観を持つ「Z世代」が新入社員として働き始めている。仕事への向き合い方をめぐって摩擦が起きる現場も少なくない。Z世代は何を考えているのか、それに対し、上司などの旧世代の社員はどのように対応すべきなのか。
「仕事ができない人」に特有の、3つの思い込み
仕事ができる人とできない人の違いは何か。ちょっとした習慣や物事の捉え方のコツをつかめば、できない人を脱却できるかもしれない。「できない人の思い込み」を基に、そのヒントを解説する。
