採用も“ファン作り” トヨタが実施する「採用色を出さない採用」とはいったいどんなものなのか:「自動車産業」のイメージ脱却を狙う(2/3 ページ)
トヨタは「自動車をつくる会社」から「モビリティカンパニー」にモデルチェンジすることを掲げている。その過程でエンジニアなどの専門人材の獲得が必須に。「採用色」を出さない採用活動を意識しているというが、どんなものなのか。
マス向け広告とターゲット別広告を使い分け
トヨタでは、採用広告を「マス広告」「ターゲット別広告」の2つに分けて考えているという。マス広告は認知向上を目的に、オウンドメディア「トヨタイムズ」を中心に経営層の情報発信、車づくりに対する会社の方向性の発信を行っている。対してターゲット別広告はより求人に基づいたもので、専門メディアでの広告配信のほか、職種ごとのキャリアイメージや技術的な取り組みを紹介している。
「3月には、マス広告として山手線車内に中づり広告を掲示しました。キャリア採用を行っていることへの認知拡大が目的で、転職者の多い春に合わせて実施。最近は一人一人にカスタマイズした広告手法が増えている中で、あえて山手線での中づり広告で“アナログ”に届けることで、候補者の方に深く印象付けたいという狙いがありました。実際にこの広告を見て数十人の方からご応募いただき、採用に至った事例もあります」(小河原さん)
ターゲット広告では、2017年に南武線で実施した中づり広告が話題を集めた。「えっ!?あの電気機器メーカーにお勤めなんですか!それならぜひ弊社にきませんか。」「シリコンバレーより、南武線エリアのエンジニアが欲しい。」「ネットやスマホの会社のエンジニアと、もっといいクルマをつくりたい。」といったメッセージで、沿線の研究所やオフィスに努めるエンジニアを“狙い撃ち”した。
「南武線の施策は自動運転やコネクティッドなどの技術を担うITエンジニアをターゲットに実施しました。当時から、自動運転技術やコネクティッドカーなどの新しい技術開発に関わるソフトウェア人材が自動車業界全体で不足しているという課題感がありました。ソフトウェア人材の転職先はIT業界が主流であり、転職顕在層のみにアプローチをするだけでは不十分と考え、転職潜在層にアプローチすべく、沿線に大手の電機メーカーなどの研究施設が集まっている南武線車内でポスター掲示を行いました」(小河原さん)
南武線沿線での広告に対しては、ネット上で話題になるなど想定よりも反響が大きく、ポジティブな反応が多かったという。
「他企業からは『トヨタさん思い切ったことをするね』『日本の転職市場を活性化させる方向にもなるので、これはかなりいいね』というような意見をいただきました。ポスター掲示、ネット上での拡散、メディア掲載などが合いまった結果、沿線勤務のターゲット人材の認知につながったことに加え、南武線沿線勤務ではないターゲット人材へもリーチできたと考えています。結果として、応募数は大きく増えました」(小河原さん)
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