ダノンジャパン社長に聞く「日本発のオイコスが世界に展開できた理由」:製品のイノベーションハブ(3/3 ページ)
乳製品を中心とした食料品を製造するフランスのメーカー「ダノン」。ダノンジャパンのローワン・ボワシエ社長に、国産の乳製品メーカーが群雄割拠する日本市場でのビジネス展開について聞いた。
新工場の建設 生産能力向上を常に考える
――世界のトップ3市場は米国、中国、フランスとなっています。日本市場での目標数字はありますか? 合わせて売上目標も教えてください。
申し訳ないのですが個別の国・地域の数字については開示していません。トップ5に日本は入っていないとだけはお伝えしておきます。だからと言って、日本市場の重要性が下がるとは考えておりません。
特に仏パリ本社の認識として、チルド乳製品と植物由来の製品では日本市場への関心は高いと思っています。日本の存在感をより高めるには、生産能力の増大が大事だと考えております。
私の仕事の1つは、ダノン本社に日本がどれだけ投資をするべき国であるかを認識してもらうことです。幸い、オイコスの生産ラインを2倍にまで増強することになりました。
――日本への投資を増やすとのことですが、館林工場の生産能力向上の他に、例えば、別工場の建設も考えているのですか?
いい質問だと思います。別な新工場を新しく建てるのか、生産委託または共同生産という形なのか。
日本は天災が多く、1つの工場に依存すると事業の継続性に問題が出る可能性もあるので、そういった点からも考えます。さらに言えば、輸送費の高さがあります。館林から西日本方面に商品を運ぶのはコストがかかるので西側に新しい工場を建設する方法もあります。常に、生産チームと話をしながら進めている状況です。
――新型コロナの影響で在宅勤務が増えるなど行動変容が起こりました。一部は元に戻らない可能性もあります。そういう環境下でのビジネスはどうしますか?
実はいろいろな形で、異なる方法によって消費者の行動を毎週のように調査しています。その分析の中で、将来の大きなニーズが見えてきますので、それに応じて対応していくことになります。
――行動調査がシェアの拡大につながっていると思うのですが、その一方で日本は少子化が進んでおり、市場が小さくなっていきます。シェアを取り、かつ成長していく難しさとは何ですか?
それを乗り越えるには、健康のためのソリューションを特定の世代に届ける方法があります。日本は高齢化社会ですので、健康寿命を獲得していく商品が考えられます。こちらも日本で成功すれば、他の国や地域での横展開が可能となります。
――SDGsが世界全体で叫ばれており、パッケージングも大きな要素となります。どのような対策をしていますか?
2つの課題があると思っています。各国・地域において法規制が違うので均一性がありません。日本においても廃棄物の素材の循環性についてはっきりとした方針が打ち出されていません。私たちとしては、どうやってエコな包装にしていくのかという点からみるので、正しい投資をしなければいけません。そのために、現地の法律を理解するのが1つです。
2つ目として、サステイナブルな素材を使うことは、高価になるので代価を払っていただくことになります。「コストを消費者に吸収してもらえるか?」という中で、理解を深めてもらうための説明が必要だと思います。
毎週、消費行動を調査
以上がボワシエ社長へのインタビュー内容だ。日本には国内メーカーもあり、乳製品などの競争が激しい。その上、日本の消費者は体内に入れる商品には特に厳しい目を向ける。それだけに、綿密な計画を実行しないと市場から淘汰されてしまいかねない。
ダノンは毎週、消費行動を調査して日本人の特性を理解することに注力している。それが乳製品でのシェア拡大に寄与しているのだろう。
しかも製品開発に生かされ、オイコスが日本発で世界に広がっていった。もし高齢者向けの商品が開発できれば、それも横展開できるという発想を持っている。ガラパゴスな商品が多い日本で、タノンが日本で展開しているビジネスの手法は日本企業の1つのヒントになると言えそうだ。
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