りそなホールディングス南昌宏社長が語る コロナ禍でも業績好調の理由:アプリは431万ダウンロードを突破(1/2 ページ)
りそなホールディングスは2022年3月期の中間決算を発表。銀行本来の業務からの利益である「資金利益」「フィー収益」「その他業務利益」の合計である業務粗利益は、前年同期比58億円増の3231億円で、親会社株式に帰属する中間純利益は同244億円増の808億円だった。同社の南昌宏社長にコロナ禍でも好業績の理由や今後の戦略を聞いた。
りそなホールディングスは2021年11月、2022年3月期の中間決算を発表した。銀行本来の業務からの利益である「資金利益」「フィー収益」「その他業務利益」の合計である業務粗利益は、前年同期比58億円増の3231億円で、親会社株式に帰属する中間純利益は同244億円増の808億円だった。
同社の南昌宏社長にコロナ禍でも好業績の理由や今後の戦略を聞く。
南 昌宏(みなみ まさひろ) りそなホールディングス 取締役兼代表執行役社長 事業開発・DX担当統括。1965年生まれ。1989年にりそなグループ入社。以降、りそなホールディングス グループ戦略部グループリーダー(2009年)、同グループ戦略部長(13年)、取締役兼執行役オムニチャネル戦略部担当兼コーポレートガバナンス事務局副担当(19年)などを歴任し、20年4月から現職
フィー収益が特に好調
「少しずつではありますが、良い流れになってきているのかなと思っています。預貸金利益とフィー収益から経費を引いたものを私たちはコア収益と呼んでいますが(同122億円増の687億円)、21年3月期に12期ぶりに反転していまして、その基調を今中間期にも維持できました」と、南社長はコロナ禍でも好調な業績をあげた要因を分析する。
目を見張るのは同120億円増の1055億円となったフィー収益(決済、不動産、信託、ファンドラップ、保険などの各種サービスを利用するときに発生する手数料収入のこと)だ。
「りそなグループ発足以来、フィー収益は半期ベースで最高益となりました。時代の変化とともに、種まきをしてきたのですが、例えば資産運用サービスであるファンドラップ、VISAを標準装備したデビッドカードがグループアプリの進展と相まって、ベース収益としての割合が上がってきたことがあります」
事実、同30.8%という大幅な増加をみせたデビッドカード事業はその最たる例だ。米国やカナダではATMのカードを作る際、デビットカードの機能は標準装備になっている。
「日本はこの分野で遅れてきました。コロナがもたらした非接触という新しい意識が、デビッドカード普及を後押ししたことは間違いありません。当社はその前の段階、5年ほど前からデジタルに力を入れていました。グループアプリとデビットカードの親和性が高く、顧客に新しい価値として提供できていると思います」
DXへの投資が高コスト体質から筋肉質な体質へと社内に変化を生み、経費の部分がほぼ横ばいで推移したことによってコア収益改善に寄与したという。
決済の分野では、米ペイパルが日本のペイディを買収するなど、“今、買って、後で払う”「Buy Now Pay Later(BNPL)」が最近、若者を中心に広がりを見せている。南社長に、この動きをどう捉えているのかを聞くと、もう少し様子を見る必要があるというニュアンスの回答をした。
「日本ではクレジットカードが普及していますが、これも後払いの一種です。日本では今後どうなっていくのか見当の余地があると思っていますが、非対面、非接触における、お客さまの行動変容とニーズを探っていくことがまず大事です。そこから組み立てていきたいと考えています」
2つの“X”を通じた改革
COP26でも採択された地球温暖化対策も喫緊の問題だ。ただ、変化の激しい経営環境の中で、持続的な成長を続けるのは簡単ではない。りそなは、企業は持続可能性を重視した経営を目指す「SX(サステナビリティートランスフォーメーション)と、DXという2つのXを通じた改革」を掲げている。
SXでは顧客にコンサルティングビジネスをし、話し合いを進めながら、持続可能なビジネスモデルへの転換を図ることを目指す。すでにりそなは、SDGsに対応したファンド商品を展開していて、「りそなSXフレームワークローン」「ESG目標設定型特約付融資〜TryNow〜」という新規の金融商品を創設。持続可能な社会を支える企業になってもらう、この商品を利用してもらうことを通じて企業に価値を提供している。
日本でも唱えられ始めたSXを経営ビジョンに掲げた真意を聞いた。
「社会価値と経済活動などがトレードオンに近づいていることを前提に、長期的には結果として社会産業構造が変わっていくという大きな流れがあります。これに対してわれわれ自身が変化をしていかなければいけません。
法人であれば50万社、個人だと1600万のお客さまの要望に適合していく必要があります。お客さまがSXを前提にしたときにどういう位置にいるのか。今後のリスクをどう捉えているのかといったことを深い対話をしながら相互理解を深めていく。その後に具体的な一歩をどうするかを伴走型かつ共創型で1人ひとりと対峙しながら対話していく。なぜなら全容は分かっていないからです。ただ、産業構造が変わっていく中で、予測と準備をして一歩目を踏み出す価値は大きいと思っています」
21年6月に策定したサステナビリティ長期目標では「リテール・トランジション・ファイナンス」について21〜30年度に累計10兆円の取扱高にすることを掲げている。
「大きな旗の下に最初の車輪を動かしていくことが大事なので目標を置きました。その実現のためには私たちが変わらないといけないと思っています。法人としての組織能力をどう上げていくのか。コンサルティング力、ファイナンス力もしっかり高めていくことが必要でしょう」
決済は新しい成長分野
人間が変わるのが難しいように、企業が変化することは簡単なことではない。実際にどういったことを変えるのだろうか。
「ご指摘の通り、そんなに簡単な話ではないのは事実です。まず従業員の意識をどう変えていくのか。具体的な道筋、個人の知見やノウハウを高めるやり方、組織能力を高めるやり方の道筋も明確に示して行動に移していかなければなりません。お客さまとの対話の中にも学びがあり、お客さまのほうが業界のことは詳しいので、それを吸収して学び、組織知にしていこうという流れが変化の1歩目です。
もう1つは、人間は経験したことがないことを想像しながら進んでいくのは苦手だと思うのです。それだけに小さな成功体験や結果を確認しながら前に進んでいくのが大事です。SX、DXで半歩先にいくには、どういう準備、仮説、アプローチが必要なのかをずっと考え続ける以外にないと思います」
その一方で南社長は「Face to Faceという対面での接客に価値があると思っていまして、いろいろなサービスを提供してきました。事業や資産の承継、働き方改革、再成長支援など、深いコンサルティングが伴う分野でも結果が出てきました」と話す。
「Face to Faceの領域にもデジタル武装がなされた状況で、人への質的な共感力、商品の提供能力や説明能力といったものを高めていくことが重要だと思います。B2Bでは法人サイドの中で動いている、または取引先と動いているデータと向き合うことで新しいビジネスチャンスがあると考えています。デジタルと先ほどのデビットカードなどの決済は新しい成長分野と理解しています。リアルとデジタルを融合させながら、どうやって新しい価値づくりをするかが重要だと考えています」
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