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フィリップ モリス インターナショナルCEOを直撃 IQOSをいかにして日本市場に訴求したのか?新・たばこビジネス【前編】(1/2 ページ)

「煙のない社会」を提唱し、10年以内に日本国内の紙巻たばこの販売から撤退を目指すフィリップ モリス インターナショナル。

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 フィリップ モリス インターナショナル(PMI)は8月、加熱式たばこの新型IQOS ILUMA(イルマ)と、IQOS ILUMA 専用たばこ TEREA(テリア)スティックを日本市場に投入した。同社は「煙のない社会」を提唱し、10年以内に日本国内の紙巻たばこの販売から撤退を目指す方針を掲げている。具体的には2025年までに同社の紙巻たばこ喫煙者の少なくとも4000万人を煙の出ない製品に切り替え、同社の純収入の50%以上を煙の出ない製品で占めることを目指す。

 その陣頭指揮を執るのは5月に最高経営責任者(CEO)に就任したヤチェック・オルザック氏だ。オルザックCEOはIQOS ILUMAやTEREAの開発にも深く関わってきた。IQOSなどの好調によって同社の2021年第2四半期(4〜6月期)決算を見ると、調整後営業利益は前年同期比18.7%増の34億5400万ドルで、コロナ禍でも独自の成長を遂げている。

 今後のPMIの戦略についてオルザックCEOが単独インタビューに応じた。前編ではIQOSをいかにして日本市場に訴求してきたのかを聞く。


ヤチェック・オルザック 1993年にPMI入社。PMIのポーランドならびにドイツ市場のマネージング・ディレクターや、欧州連合地域のプレジデントなど、欧州各地で財務およびゼネラルマネジャーを務める。2012年に最高財務責任者(CFO)に就任。18年に最高執行責任者(COO)。ポーランドのウッチ大学で経済学修士を取得。56歳(リリースより)

今後10年で「煙のない社会」に移行

――フィリップ モリスは「煙のない社会」を提唱していますが、その狙いはどこにありますか? 

 たばこは健康にマイナスの影響をもたらす側面があります。PMIの責任としては健康に害をあたえる有害性成分が低減されたIQOSのような商品を、消費者に訴求していくのが重要だと考えています。

 紙巻たばこの喫煙をいかにしてやめてもらうのか。そのための製品をどう展開していくのか。この2つが戦略の大きな柱となります。煙のない社会を実現するために、私たちは科学的調査をし、技術革新をすることによって、いかにして解決策をスケールアップできるかを常に考えてきました。

――現在日本では、そのビジョンをどの程度まで浸透できていると考えていますか?

 「煙のない社会」というビジョンは日本から始めたものです。現状、IQOSを日本に投入してからすでに2割を超える人が加熱式たばこにスイッチしています。日本では、たばこ製品の販売そのものは年々、減少しています。

 その一方で、加熱式たばこというカテゴリーの販売ペースは加速している状況です。この5、6年のうちに日本のたばこ消費者の3分の1は、加熱式たばこのようなより良い代替製品にスイッチしていくでしょう。最長でも10年ぐらいで、「煙のない社会」に移行できると考えています。これは、喫煙者の健康のためにも、社会のためにも良いことであるはずです。


「新型 IQOS ILUMA」投入によって更なる売り上げの拡大を目指す

IQOSをいかにして日本市場に訴求したのか

――ライバル企業のJTなどはプルーム・テックなどの加熱式たばこを売り出している一方、貴社のように紙巻たばこからの撤退までは表明していません。競合も少なくない日本市場をどう捉え、どんな戦略をとっていくつもりですか?

 もちろんJT、ブリティッシュアメリカンタバコ(BAT)なども紙巻たばこに替わる代替製品を日本市場で展開していますので、切磋琢磨してより良い商品を売っていくことになります。業界全体として煙のない社会を進められればいいのではないでしょうか。

 それは世界の市場においても同様です。ビジョンを共有してくれるステークホルダーをどれだけ増やせるかによって、政策を推し進められる度合いが変わります。

 例えば日本での事例として、コンビニエンスストアがあります。コンビニは加熱式たばこを展開するスペース(レジの後ろにあるたばこの棚)を私たちに用意してくれました。そのおかげで消費者に、どんな商品があるのかを訴求できたのです。


左・IQOS イルマ プライム、右・IQOS イルマ

――2014年に名古屋を皮切りにしてIQOSを発売しました。日本市場に広めるために意識していたことは?

 消費者に寄り添った展開ができるかを大事にしていました。紙巻たばことは異なったB2Cへの投資をしています。具体的にはIQOSストアやポップアップショップを展開し、体験の場を増やしました。

 もし消費者が何か懸念をもっているのであれば、それについてヒアリングして、疑問点を払拭できる有益な情報を提供します。そういったやりとり自体が重要だと考えています。このアプローチをした結果、100人がIQOSを試すと70人が紙巻たばこから切り替えました。かなり高い割合ではないでしょうか。

 日本でIQOSは、イノベーションを起こした商品という印象を与えています。一方で、紙巻きベースの喫煙者の中には、本当に有害性成分の量が平均で95%削減されたのか懐疑的な人もいました。そういった状況の中で助けになったのは成人の消費者の中でもより若い層でした。インターネットへのアクセス頻度が高い層で、新しい考え方に対する感受性が強く、紙巻たばこ喫煙者である親に対して「IQOSという解決策があるんだよ」と伝えてもらったことは大きかったと思います。

 喫煙者からすれば、従来の紙巻たばこよりもIQOSにスイッチしたほうが健康への害を低減できる可能性があるのです。それに煙が出ないという特性は、喫煙者の周辺にいる人にも配慮したものです。だからこそ、IQOSが好まれていると考えています。


新型IQOS

新型IQOS ILUMA発売は「最高の出来事」

――イルマを試してみましたが、また吸ってみたいと思いました。デザインもよりスタイリッシュになった印象です。

 今回、日本からイルマシリーズを投入したわけですが、これまでのIQOSの歴史を考えると、常に日本先行で歩んできています。イルマの誕生についても、日本の消費者から得たさまざまなフィードバックがあったおかげだと考えています。

 イルマはブレードがなく、蒸気の質も一定で安定しています。味も良く、さまざまなバリエーションもあります。デバイスもいろいろな価格帯で提供できるので、イルマの発売は、これまでの歴史の中で最高の出来事だと思っています。


左・IQOS イルマ プライム、右・IQOS イルマ

――ブレードのない製品に置き換わるのですか。それともブレードありとの併売になるのですか?

 できるだけブレードなしの製品を広げていきたいと考えています。「煙のない社会」実現のためによりよいソリューションとして、日本の消費者にイルマを訴求していきたいからです。そういった背景から世界で初めてブレードのない製品を日本で投入したわけです。

――これまでの機種でもBluetoothを搭載した商品はありましたが、イルマではIoTの機能を搭載しているのですか?

 Bluetoothはイルマにも搭載しています。デバイステストに使うことや、未成年者が使えないように、デバイスロック的なことで年齢確認もしていきたいと考えています。


IQOS イルマ プライムとIQOS イルマの製品詳細

――イルマとテリアの言葉の意味は?

 イルマは光、明るさという意味で、最新の製品という意味でもあります。加熱式たばこに光をもたらすものです。テリアは、過去のIQOSの商品と互換性がないことからも分かるようにヒートスティックの構想を変えたわけです。そのためにも、テリアという名前を強調しなければならないと考えました。


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