特許庁、「辞めたけど良い会社ランキング」で4位 ”眠らない霞が関”で唯一評価されるには理由があった:グーグルやP&Gジャパンを抑え(3/3 ページ)
オープンワークが9月に発表した「退職者が選ぶ『辞めたけど良い会社ランキング2022』」で特許庁が4位を獲得した。多忙を極めるイメージのある中央官庁の中で、なぜ評価されたのか?
退職者から評価される企業の特徴は?
ここからは、退職者から評価される組織の特徴について、「退職者が選ぶ『辞めたけど良い会社ランキング2022』」にランクインした企業のクチコミを見ながら深掘りをしていきたい。トップ10の内、その半数以上が外資系企業で4社がコンサルティングファームという結果だった。
それら企業の退職者からは、「退職後、さまざまな経験をしたが、ここで得た知識やスキルが大きな基盤となっている」「成長環境として十分な経験をさせてもらった」などのクチコミが多く寄せられた。
「実際に、その後、ベンチャーキャピタル、再生ファンドを経て、起業し、以来10数年で3000人を超える企業に育てることができた。マッキンゼーにいた3年で得られた考える力やどんな大きな部隊も屁とも思わない度胸なしでは考えられない」(マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社、コンサルタント、中途入社男性)
「入社直後から、その職種のプロとしてふるまうことが求められ、期待していた以上に短期間で成長することができました。短い期間で特定のスキルを成長させ、伸ばすという意味で、P&Gに入社を決めた決断は間違っていなかったと感じています」(P&Gジャパン合同会社、マーケティング、新卒入社女性)
外資系企業やコンサルティングファーム以外の企業はどうか。2位のリクルートマネジメントソリューションズと10位のサントリーホールディングスのクチコミを見ていきたい。
「自分のやりたいことと会社としてやって欲しいことを丁寧にすり合わせてくれることが、働きがいにつながっている。多くの上司が、自分の仕事に対して意味付けを行なってくれるのもとてもありがたい。自己申告制度が充実していて、成長機会が多い。また、管理職が一人ひとりの成長のために何ができるか考える人材開発委員会が開かれていて、個別のアサイメント、異動に関して真剣な議論が行われている」(リクルートマネジメントソリューションズ、研究開発職、新卒入社男性)
「やってみなはれの文化が根付いており、多くの社員が愛社精神にあふれている。温かい人も多い。これがこの会社の強みだと思う。やる気があれば挑戦させてもらえる風土がある。また、人付き合いはかなりウェットで飲み会も多いので、合う・合わないはあると思う」(サントリーホールディングス、マーケティング、新卒入社女性)
共通するのは、特許庁と同じく「個人の裁量の大きさ」だ。それをただ与えるだけでなく、会社からの方針をしっかり示せていることが、組織としての求心力にもなっており、結果働きがいにつながっているように見受けられる。
退職者から評価される組織の共通点とは
ここまで、特許庁をはじめとする退職者からの評価が高い企業の傾向を見てきた。評価が高い企業に共通するキーワードはいくつか挙がったが、裁量権の大きさや、退職後のキャリア形成において重要な経験となることなど、個人のキャリアを広げる機会や環境を整えることが退職者からの高い評価につながると言えそうだ。
「リスキリング」という言葉を耳にすることが増えた今、企業への就業においても個人の成長支援はますます重要なポイントになっていくだろう。
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