リストラを礼賛する経営者たち──魅惑の「雇用の流動性」は何を引き起こすのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
「日本は解雇規制が厳しすぎる、流動性がない」と主張する経営層は少なくない。米国など諸外国のように、雇用の流動性を高めれば賃金が上がるという考えに潜むウソと間違いとは──?
以下は、ある企業の執行役員の人が教えてくれた、社員に希望退職を促す“手口”です。
ターゲットを絞って、圧迫面接を繰り返して、じわじわ追い詰めるんです。あまりやりすぎるとパワハラになってしまうから気を付けなきゃいけないんですけど、会社側もわりと強気で。多分、以前より転職しやすくなったとか、日本型雇用はもたないという意見が増えてるからだと思います。
僕は圧力をかける方なんで、正直しんどいですよ。圧力かければかけるほど相手は意固地になる。根比べです。人事には数値目標が与えられるので、仕事なんだと自分に言い聞かせてますけど「俺、何やってんだろう」と思うことは正直あります。社員に「お引き取り願いたい」と迫るのが、自分の仕事っていうのもむなしくなることもありますけど、会社が変わるためには仕方がないんですよね。
彼をインタビューしたのは、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する数カ月前。
当時は、将来を見込んでの「希望退職」の名を借りたリストラに手を染める企業が目立ち始めていました。そこで、“切る側”の人たち数人にインタビューを行ったのです。
あれから3年以上の月日がたち、くしくも現在、海の向こうの「大量解雇報道」が連日伝えられています。
米国でメタが1万1000人以上、アマゾンが約1万人、ツイッターが約8000人の削減を発表し「世界を席巻してきたGAFAが大規模な人員削減に乗り出した」「日本も対岸の火事とはいえないぞ!」「そうだよ。円安だし、ウクライナのこともあるし」と、わが国の会社員を心配する人も少なくありません。
一方で、「日本も解雇規制を緩和しないと!」という、いつも通りの声も高まってきました。
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