リストラを礼賛する経営者たち──魅惑の「雇用の流動性」は何を引き起こすのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
「日本は解雇規制が厳しすぎる、流動性がない」と主張する経営層は少なくない。米国など諸外国のように、雇用の流動性を高めれば賃金が上がるという考えに潜むウソと間違いとは──?
半数以上は黒字企業 「希望退職」という美しい名のリストラ
「日本は解雇規制が厳しすぎる、流動性がない」と主張する経営層は少なくありません。「解雇規制を緩和すべし、流動性を高めるのが先決、そうしないと経済成長はない!」と鼻息を荒くし、「流動性を高めれば賃金が上がる!」と、とにもかくにも「簡単に切れる」状況を望むのです。
しかし現実をみれば、日本の解雇規制が厳しいからといって、事実上はリストラができないわけじゃない。ましてや黒字リストラも珍しくありません。
2018年には、NECは3000人削減。三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分、三井住友フィナンシャルグループは4000人分、みずほフィナンシャルグループは1万9000人分の「業務量」削減などと、50代社員をターゲットに「リストラの嵐」が吹き荒れました。さらにコロナ禍が直撃した20〜21年の上場企業の早期・希望退職が拡大したのはご承知の通りです。
早期・希望退職の実施企業は2年連続で年間80社以上にのぼり、2年間の募集人数は3万4527人と3万人を超えました。これはリーマン・ショック直後の09年〜10年の合計3万5173人に迫る高水準規模でした。
また、22年1〜9月に早期・希望退職者の募集が判明した上場企業は、33社(募集人数5000人)にとどまるものの、実施企業の半数以上は黒字です。
解雇規制が厳しい、解雇のハードルが高い、といわれるこの国で、これだけの人たちが「希望退職」という美しい言葉の名のもとに仕事を打ち切られている。しかも、“事業再編”という名目の黒字リストラは、一般化しているといっても過言ではありません。
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