日本製車両採用の「ドーハメトロ」、サッカーW杯観客輸送で活躍中 記者が乗ってみた:三菱重工や日立が受注(1/3 ページ)
サッカーW杯を開催中のカタールで日本企業が受注した、日本製の鉄道車両がW杯の観客輸送で活躍している。現地滞在中の記者が実際に乗車した感想もレポートする。
中東カタールで開催中のサッカーワールドカップ(W杯)で日本代表がドイツ代表に歴史的勝利を挙げ、大会に日本国中の注目が集まっている。そんなカタールでは日本企業が受注した、日本製の鉄道車両がW杯の観客輸送で活躍している。現地滞在中の記者が実際に乗車した感想もレポートする。
総工費3兆円 「都市交通システムとして世界最大規模」
カタール政府は2015年2月、W杯開催に向けて地下鉄「ドーハメトロ」の整備を決めた。地下鉄の整備は同国にとって初。三菱重工業、三菱商事、日立製作所、近畿車輛の日系4社に加え、機械大手の仏タレス(Thales)の5社連合で受注した。
約3兆円(推定)とされる総工費をかけ、19年に5月に開業。全自動無人運転という点が大きな特徴で、三菱重工によると「都市交通システムとしては世界最大規模のプロジェクト」という。最長20年間の鉄道車両などの保守も企業連合が担当する。
三菱重工が企業連合のリーダーを務め、受配電設備やプラットホームドア、軌道工事、トンネル換気設備などを供給。鉄道車両は近畿車輛(大阪府東大阪市)が製造し、三菱商事とともに納入した。
日立は軌道・電車線などのインフラの安全性を総合的に検測する総合検測車や一部メンテナンス設備を手掛けた。唯一の外資系タレスは、最新の列車制御方式(CBTC)を用いた信号システムや通信・保安システム、総合運行管理センター、自動料金収受システムを担当した。
LNG(液化天然ガス)など天然資源に恵まれたカタールでは、自動車の利用が盛んだ。一方で、W杯関連施設の建設需要の高まりでアジアやアフリカなど海外から労働者が流入し、人口や自動車が急激に増加。特に首都ドーハでは、交通渋滞が深刻化していた。渋滞改善に向け同国政府は開発マスタープラン「カタールナショナルビジョン2030」を策定し、地下鉄建設を同プランの中核に据えた。
11カ月間の交渉 故安倍晋三元首相も受注後押し
三菱重工ら企業連合は14年3月の入札開始以来、カタール側と11カ月間かけて交渉。最終的に各社の技術力に加え、過去の海外での納入実績が評価され、受注に至った。特に三菱商事と近畿車輛はエジプトで約1600両、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイでは約400両の車両を納入した実績があった。
受注獲得を巡っては、日本政府も後押しした。外務省などは13年8月、「カタール・ビジネスフォーラム」を開催。故安倍晋三元首相がカタールのアブドッラー首相(当時)と現地で会談し、“トップセールス”で日本の鉄道技術の高さなどをアピールしていた。
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