リモートか、出社か――人も組織も“持続可能”なこれからの働き方とは?:リモートワーク総論(1/4 ページ)
総務省によると、日本の全企業の51.9%が何らかの形でリモートワークを導入しています。長らくみんなで同じ場所で働いてきた私たちに、リモートワークはどうやって浸透していったのでしょうか。どのような環境に変わっていったのでしょうか。
先日子どもと出張科学教室に出かけ、ダンゴムシを紙で作った迷路の中に入れる実験をしました。ダンゴムシは迷路の中で目の前が壁になったときに、左右どちらかに曲がります。そしてまた壁に当たったとき、必ず前回の曲がった方向とは反対の方向に曲がります。
これは、ずっと同じ方向に曲がっていると元の場所に戻ってしまう危険性が高いこと、交互に曲がることでもと居た場所から確実により遠くに進むことができるという生物が生存競争から勝ち得てきた本能だそうです。
私たちはどうでしょう。テレワーク生活も1周してより遠くに進んだでしょうか?
リモートワークで変化した評価の軸
総務省が5月27日に発表したテレワーク導入状況の推移によると、日本の全企業の51.9%が何らかの形でリモートワークを導入しています。
長らく企業の(部署の)共同体としてみんなで同じ場所で働いてきた私たちに、リモートワークはどうやって浸透していったのでしょうか。その結果どのような環境に変わっていったのでしょうか。
リモートワーク浸透の要因の1つは、中抜けの可否や休日深夜残業の規制など、社内で議論を重ね、ルール化されてきたことがいえるでしょう。そのルールに沿って働く従業員も、上司が隣にいなくても「今日はこれを完結させて終了」という線引きに慣れ、働く時間とプライベートの切り分けにも慣れてきました。
次に、同じ空間にいないという不便さや不安要素を、ICTツールの導入やコミュニケーションツールで乗り越えてきました。その結果、ITリテラシーが向上し、業務が効率化されたこともリモートワーク浸透の要因の1つでしょう。また、コミュニケーション方法の変化により、しっかり言葉にしないと真意が伝わらないため、「察して」は通じなくなりました。
つまり、リモートワーク浸透により、評価の軸が「出社からの残業の頑張り」よりも、「限られた労働時間の中で出す成果」に比重が置かれるようになりました。また、実は必要なかった作業を省いたことで、徹底した業務効率化が図られました。知らず知らずのうちに「最短距離でゴールするために何をすべきか」というタスク化された環境に変化していったのです。
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