4000本を売り上げる日も “よそがまねできない”仙台名物「ひょうたん揚げ」の秘密:地域経済の底力(3/4 ページ)
杜の都・仙台に本社を構える阿部蒲鉾店。同社が約30年前から販売する「ひょうたん揚げ」は1日に4000本を売り上げることもある人気商品だ。今や仙台名物の一つとなったひょうたん揚げが長く愛される理由について、阿部蒲鉾店の阿部賀寿男社長のインタビューからひも解く。
けがの功名
ひょうたん揚げの人気が高まるにつれ、仙台駅周辺で食べ歩きする人の姿も珍しくなくなった。もっと便利に購入できるよう、本店だけにとどまらず、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である「楽天生命パーク宮城」(2005年)、そして仙台駅店(16年3月)など、販路を拡大していった。同時に、ごまを混ぜたものや、チョコレートをコーティングしたものなど、味のバリエーションも増やした。
ところが、20年春にコロナが直撃。仙台から人の往来が消え、仙台駅店は閉業に追い込まれた。
「出張や観光で仙台にいらした方が、帰る前に立ち寄ってくれるようになっていたのに……」と阿部社長は悔しがる。
しかし、転んでもただでは起きない。6月には今まで店舗でしか食べられなかったひょうたん揚げの通信販売を開始したのだ。実は、事前の準備があったからこそ可能だった。
「長らくひょうたん揚げは店舗で作っていましたが、注文個数が増えるに従い、工場でセントラルキッチン的に加工したものを店舗に出せないかと検討を始めました。冷凍保存ができて、かつ味わいが変わらない方法をいろいろ研究した結果、店舗で揚げていたのと同じような形でお客さまに提供できるようになったのです」
18年にひょうたん揚げの冷凍化の検討を開始。工場で対応できるようになったのは、19年6月ごろだ。
「当然、工場のラインを新たに作らないといけませんし、ひょうたん揚げだと、練り物製品ではなく、菓子の製造免許を取る必要がありました。生産ラインの増設から商品の設計、冷凍の加熱具合などを考える作業は非常に大変でした」
苦労の末に完成したひょうたん揚げの冷凍化は、思いがけずコロナ禍で威力を発揮した。
「お客さまが店舗に来ない状態が続く中で、冷凍のひょうたん揚げをそのまま販売できないものかと考えました。結果的に、コロナが広まってから2、3カ月ほどで通販できるようになったのは、事前に取り組んでいたからこそ」
通販では、販売の数量や時期を限定しているが、仙台に足を運べない人たちからの引き合いが強い。「例えば、学生時代に仙台に住んでいた方で、『20年ぶりに食べた、懐かしい』という声をいただいたりします」と、阿部社長はうれしそうに顧客の反応を話す。
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