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4000本を売り上げる日も “よそがまねできない”仙台名物「ひょうたん揚げ」の秘密地域経済の底力(4/4 ページ)

杜の都・仙台に本社を構える阿部蒲鉾店。同社が約30年前から販売する「ひょうたん揚げ」は1日に4000本を売り上げることもある人気商品だ。今や仙台名物の一つとなったひょうたん揚げが長く愛される理由について、阿部蒲鉾店の阿部賀寿男社長のインタビューからひも解く。

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副次的な効果も

 この冷凍のひょうたん揚げはさらなる価値を生む。

 衣の形がうまく丸まらなかったものは商品として使うことができないため、たとえ1玉がきれいにできても、廃棄せざるを得なかった。ただ、それはエコではない。商品として販売する方法はないかと同社は思案を巡らせた。


ひょうたん揚げの活用が広がっている

 ちょうどコロナ禍で食品の自動販売機がブームだというニュースを見た阿部社長は、仙台市泉区にある自社工場の前に自販機を設置。形のいいものを6玉集め、真空パックにして、「ころころひょうたん」(税込500円)という名前で22年3月に発売した。すると予想を超える売れ行きを見せている。

 「わざわざあそこまで買いに行かないよなと思い、特に宣伝もしていませんが、本当に予想以上の売り上げでびっくりしました」

 コロナの影響などで同社全体の売上高は20億円ほどに落ち込んだが、ひょうたん揚げは変わらずに仙台で愛され続けている。自ら情報発信せずとも、いろいろな人たちが宣伝を買って出てくれる。例えば、仙台でコンサートを行うアーティストが食べて、感想などをSNSに投稿。するとそれを見たファンたちが店に大挙して押し寄せることもしばしば。阿部社長は感謝を口にする。

 「これだけ市民の方々などに好んでもらえる商品に育ったのはうれしい。笹かまにしても、全国的な知名度を得たのは、地元の方に愛していただいたからこそ。これからも地元を大切にしながら、地域と共に育っていける会社でありたい」

 ひょうたん揚げはこれからも仙台の逸品として、多くの人々に幸をもたらすだろう。

著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。


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