3つのよくある残業対策、小手先の対応になっていないか? その効果と落とし穴:残業代を適切に管理できている?(3/4 ページ)
経営において、コストの適正管理は極めて重要です。コストの大部分を占める人件費をどう調整すべきか? 今回は、よくある残業代対策とその課題についてご紹介していきます。
固定残業代の導入
(2)固定残業代(定額残業代・みなし残業代)を導入する
固定残業代は、「みなし残業代」「定額残業代」などとも呼ばれますが、どれも理屈は同じで、給与の中にあらかじめ一定の残業代を含んだ状態で支給するものです。
総支給額と内訳の関係は上図のようになります。固定残業手当5万円が仮に25時間相当の残業代とした場合、実際の残業が40時間ならば25時間を超過した15時間分(40−25)のみを追加で払いますが、残業が25時間以下であれば、総支給額30万円をそのまま払います。よって、人件費が変動しにくいので会社にとってコスト管理が容易になります。
ただ固定残業代については、労使間の見解の相違により争いが起こりやすいため、取り決めや運用について通達で注意点が示されています。
(前略)
(1) 基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提に、例えば、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金に当たる部分について、相当する時間外労働等の時間数又は金額を書面等で明示するなどして、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区別できるようにしているか確認すること。
(2) 割増賃金に当たる部分の金額が、実際の時間外労働等の時間に応じた割増賃金の額を下回る場合には、その差額を追加して所定の賃金支払日に支払わなければならない。
そのため、使用者が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日付け基発0120第3号)を順守し、労働時間を適正に把握しているか確認すること。
(後略)
参照:時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのための留意事項について 基監発0731第1号 平成29年7月31日
これを参考にして固定残業代を導入するには、就業規則の整備と合わせて、固定残業手当の額と固定残業手当が残業手当の何時間分かを記載した労働契約書を作成し、労働者の確認を裏付ける署名をもらっておくことをおすすめします。
また固定残業代を導入すれば、一切残業代を払わなくて良いと勘違いし、勤怠管理がルーズになってしまうケースが散見されます。労働時間については、タイムカードにより正しく把握し、固定残業代を超える残業代が実際に発生した場合は、きちんと差額を支給するようにしましょう。
正しい手続きを経ずに導入した固定残業代については、裁判において仕組みそのものを否定される可能性があります。そのときは固定残業代を含めて割増賃金の単価を計算され、かつゼロからの残業代の支払いが求められるため高額になる危険性があります。
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